英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

研究開発・学会発表

診療・治療

第18回 日本臨床エンブリオロジスト学会

  • 卵子裸化処理の実際 ~当院での工夫点~
  • 平成25年1月12日(土)、13日(日)  静岡県 アクトシティ浜松
  • 第18回 日本臨床エンブリオロジスト学会
  • 緒方洋美


    英ウィメンズクリニック

【発表の概要】

 

【はじめに】


体外受精(IVF)後の受精判定や顕微授精(ICSI)を実施するためには、卵丘卵子複合体から卵丘細胞を除去する必要がある。実施するタイミングは、IVF短時間媒精を目的とした媒精後2時間 (Kattera S et al.)、Rescue ICSIを目的とした媒精後6時間 (Chen C et al.)、そして、IVF後の受精判定を目的とした媒精後16-20時間、及び、ICSI前が一般的である。この卵子裸化処理は、通常ピペッティングや酵素処理によって実施されるが、いずれも卵子に対してダメージを与える可能性があり、卵子裸化処理の手技の優劣はARTの成績を左右しかねないものである。このことを踏まえ当院では酵素処理やピペッティングに細心の注意を払っている。そこで、当院の卵子裸化処理の実際についてご紹介したい。

 

【当院で実施している卵子裸化処理の方法】


<体外受精>
①1症例につき、1番から3番の3本の内径の違うパスツールピペット(以下パスツールIK-PAS-9P;IWAKI) を用意する。パスツールの内径の目安は、1番;卵の大きさより約1.5倍、2番;卵の大きさよりやや太め、3番;卵の大きさと同じ、 
また、1番より更に太いパスツール(卵の大きさの2倍ぐらい)も別で用意しておく。症例によっては、使用することがある。
②培養器から媒精後の卵を取り出し、上記2番のパスツールにて卵丘細胞の中にある卵のみをピックアップするように、パスツール内に卵を入れて、卵丘細胞と卵を引き離す。(この際、卵のみのピックアップが困難な際は、別に用意しておいた1番より太いパスツールにて卵と少量の細胞とをピックアップするようにする。)
③2番、3番のパスツールにてピペッティングしながら裸化していく。(この際、空気を排出しないようにする為、パスツール内に培養液を吸引したのち卵のピペッティングを実施することが重要である)
④裸化が終了したら、1番のパスツールにて初期胚培養用の培養液へ移動させる。
 
 媒精後4時間で実施する場合と媒精後16-20時間に実施する場合とでは、
媒精後4時間の場合の方が卵丘細胞との接着が強く、上記②と③が困難なケースがある。一方で、媒精後16-20時間の場合には、上記②は比較的に容易で、上記③において困難な場合がまれにある。いずれの困難な場合にもパスツールで対応していることから、常に内径の異なるパスツールを必要本数より多く準備している。

<顕微授精>
当院では、酵素処理において、リコンビナントヒアルロニダーゼ(以下リコンビナント)を併用している。ウシ由来ヒアルロニダーゼ(以下ウシ由来)とリコンビナントの比較試験において、リコンビナントでは裸化処理時間は長くなったものの、胚盤胞発生率および良好胚盤胞発生率において、リコンビナントで高率となる傾向を認めたためである(Furuhashi K Hashimoto H et al.)。

 実際の方法と注意点については、実技書の『当院における顕微授精(Intracytoplasmic Sperm Injection : ICSI)の方法』を参考にして頂きたい。

 

【おわりに】


 卵子裸化処理は個々の卵の状態により手技の難易度が異なる。複数の卵がある症例において裸化処理が容易な卵もあれば、その一方で困難な卵があることもしばしばである。従ってその実施にあたっては個々の卵の状態を判断し迅速で且つ的確な対応をする必要性がある。本ワークショップでは、裸化困難症例における対応方法も動画で発表する予定である。

 

【文献】


Kattera S, Chen C. Short coincubation of gametes in in vitro fertilization improves implantation and pregnancy rates: a prospective, randomized, controlled study. Fertil Steril. 2003 Oct;80(4):1017-21.

Chen C, Kattera S. Rescue ICSI of oocytes that failed to extrude the second polar body 6 h post-insemination in conventional IVF. Hum Reprod. 2003 Oct;18(10):2118-21.

古橋孝祐、後藤栄、橋本洋美、松本由紀子、苔口昭次、塩谷雅英.ウシ由来ヒアルロニダーゼとリコンビナントヒアルロニダーゼを用いたICSI成績の比較. Journal of mammalian ova research 2010-04 27(2), 61-64.

 

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