英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

研究開発・学会発表

診療・治療

第8回 日本レーザーリプロダクション学会

  • 当院におけるLLLT(Low Level Laser Therapy)の取り組み―不妊症治療におけるエビデンスを求めて―
  • 平成25年3月31日(日) ANAクラウンプラザホテル
  • 第8回 日本レーザーリプロダクション学会
  • 塩谷雅英


    英ウィメンズクリニック

腰痛の治療を求めて訪れた閉経後女性患者にLLLTを実施したところ、月経が再開したという報告がなされて以来、LLLTの生殖機能への効果が着目され、近年不妊症治療にLLLTを取り入れる施設が増えつつある。当院でもLLLT外来を開設したところ、多くの患者が治療を希望し、現在は常時3ベッドで施術するまでに至っている。LLLTでは、弱いレーザー光の力によって細胞レベルでの新陳代謝の活性化、また組織・臓器レベルでの血行改善や新生血管の増殖、さらに神経レベルでの鎮痛、除痛効果、消炎効果などが期待される。LLLTの卵巣への効果として、卵胞顆粒膜細胞層における血管新生や細胞増殖促進、ひいては卵胞発育促進が期待される。
実際、昨年の本学会で発表した通り、LLLTを受けた患者へのアンケート調査では67%の患者が「効果を自覚した」と回答した。その中には、「受精卵のグレードが上がった」「妊娠反応が陽性になった」「ホルモン値が改善した」「子宮内膜が厚くなった」「無排卵が治った」などの回答も見られた。しかし、不妊症治療におけるLLLT治療のエビデンスは未だ十分とは言えない。そこで、不妊症治療におけるLLLTのエビデンスを求めて複数の検討を行ったので、その結果について報告したい。

1. LLLTによって胚質が改善した症例の提示
LLLTにより、胚質が改善し、その結果良好胚盤胞を得たケースは少なくない。これらの症例を紹介する。

2. 酸化ストレス度と自律神経バランス検査での検討
LLLT治療効果を推し量る指標として、酸化ストレス度と自律神経バランスを取り上げて、治療前後の変化を検討した。酸化ストレス度評価にはフリーラジカル解析装置(FREE carpe diem)を、また自律神経バランスには、心拍変動を解析するTAS9を用いた。酸化ストレス度検査では、LLLT前に比較して、LLLT後に抗酸化力が高まる傾向が示された。自律神経バランスの検討ではLLLT後に交感神経/副交感神経のバランスの指標であるLF/HFが下がることが示され、LLLTは交感神経系を抑制し、副交感神経系を優位に導く事が示唆された。

3.SEET(stimulation of Endometrium ET)法とLLLTの併用効果の検討
SEET法とは、凍結融解胚盤胞移植に先立って胚培養液上清を子宮腔内に注入することにより子宮内膜の胚受容能が亢進する事を期待した治療法である。我々は、LLLT
がSEET法の効果を促進する可能性があると考えている。そこで、従来通りSEET法を実施した群と、SEET法とLLLTを併用した群の治療成績を比較検討したところ、後者においてより良好な治療成績を得た。

4.調節卵巣刺激(COS)におけるLLLT併用効果の検討
過去の治療で良好胚を得る事ができなかった症例において、COS中にLLLTを併用し、LLLTを併用しなかった過去の周期とLLLTを併用した周期の経過を比較検討した。
LLLTは、COS開始1週間前から1回/Wの間隔で実施した。その結果、受精率、胚分割率には変化はなかったが、良好胚盤胞発生率が、LLLT非併用周期に0%であったのに対しLLLT併用周期で37.5%と有意に上昇していた。

5.胚移植におけるLLLT併用効果の検討
胚移植にLLLTを併用することで着床率が向上するかどうか検討した。LLLTは、胚移植直前におよそ1分間、子宮に直接あたるよう照射した。その結果、LLLT併用例では移植あたりの妊娠率、着床率、妊娠継続率が有意に上昇した。

おわりに
不妊症で悩む多くの患者がその治療効果を実感し、根強いニーズのあるLLLTであるが、治療効果を実証するエビデンスはいまだ十分ではなく、今後蓄積して行かなければならない。当院でもさらに症例を増して検討を続けていく予定である。

 

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