英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

研究開発・学会発表

診療・治療

第12回 日本不妊カウンセリング学会

  • 採卵時の痛みに対するアンケートの検討を通して
  • 平成25年5月31日(金) ニッショーホール(東京都港区)
  • 第12回 日本不妊カウンセリング学会
  • 藤井美喜、松浦操、柿田志津子、苔口昭次、塩谷雅英


    英ウィメンズクリニック

【目的】
当クリニックでは、採卵時の痛みを軽減させるために麻酔を使用している。使用麻酔は静脈麻酔、局所麻酔で、麻酔の効きが悪い場合は吸入麻酔を併用している。他に、麻酔以外の痛みの緩和として座薬や錠剤を使用している。
麻酔法の選択は、卵胞数や過去の麻酔使用時の反応などを参考にしている。卵胞数が多い場合は穿刺数が多くなると予想されるので静脈麻酔を選択するが、卵胞数が少ない場合でも静脈麻酔を使用しているケースもみられている。採卵時の痛みである苦痛を取り除くことが必要であるが、麻酔使用時の副作用や麻酔後の安静保持のことを考えると、麻酔は最小限にするべきであると考える。そこで、採卵時の患者の痛みの反応をみることで、今後の麻酔の選択方法の参考にするためにアンケートを実施した。

【方法】
2012年7月~8月に採卵を受けた患者を対象に採卵終了後にアンケートの主旨を説明し、同意を得た上で手渡した。無記名回答とし、回収ボックスにて留め置き法で回収した。

【結果】
アンケート回収率は92%で、325名より回収を得た。平均年齢は38.9±4.4歳であった。採卵方法は、静脈麻酔138名(42.5%)が最も多く、次に内服か座薬132名(40.6%)、局所麻酔51名(15.7%)であった。採卵中、局所麻酔から静脈麻酔に変更したのは4名であった。 
採卵時の麻酔の有無の選択方法については、「医師が決めた」216名(66.5%)、「患者が希望した」96名(29.5%)、「前回と同じ」13名(4.0%)であった。患者の静脈麻酔の主な希望理由は「痛みが怖い」「一回目もそうだった」「卵が多く育っていたため」、座薬の希望理由は「体の負担が少ない方がいい」「早く帰宅できる」「卵の数が少ない」などであった。採
卵方法による所要時間・穿刺数・卵巣刺激法を表1に示した。最も所要時間を要し、穿刺数が多いのが静脈麻酔であった。採卵時(採卵室内)の痛みで最も強かった方法は局所麻酔であり、「強く耐えられない痛み」が51名中9名(17.6%)であった。局所麻酔時の穿刺数が多い程採卵時の痛みが増すかどうかについて、「痛くない」と答えた方の穿刺数は平均15.7で、「強く耐えられない痛み」と答えた方の穿刺数は平均10.7であった。
「採卵時の麻酔使用について満足かどうか」という問いに対し、88.8%の患者が「満足」と答えていた。静脈麻酔が最も満足の割合が多く、次に内服か座薬、局所麻酔と続いていた。また、満足でない理由は、静脈麻酔は「麻酔が途中で切れた」「目覚めると痛みが強く出た」「薬が入って行く時気分が悪くなった」、内服か座薬は「痛みが強い」「ほとんど効果がない」、局所麻酔は「かなり痛かった」「針を刺す時痛い」などであった。

 【考察】
採卵方法は静脈麻酔が最も多かった。静脈麻酔の患者選択希望理由として、「痛みが怖い」「一回目もそうだった」という返答から、麻酔時のリスクや痛みの緩和方法などを患者にていねいに説明する必要があると思う。また、術中局所麻酔から静脈麻酔に変更したのは4名いたため、痛みが増強する可能性がある場合は変更できるように準備をしておく必要がある。採卵方法については、静脈麻酔は所要時間を最も要し、採卵後の安静も必要であり、麻酔時の副作用もあることから麻酔は最小限にするべきである。ただ、低刺激法でも26.1%が静脈麻酔を使用しているため、もし穿刺数が少なければ、内服か座薬・局所麻酔を選択することが可能ではないかと考える。徐々に静脈麻酔から内服か座薬・局所麻酔にシフトできるように試みていくべきである。痛みで最も強かった方法は局所麻酔であり、「強く耐えられない痛み」を17.6%のものが返答していた。局所麻酔時の穿刺数が多い程採卵時の痛みが増すかどうかについて、「痛くない」と答えた穿刺数の患者の方が、「強く耐えられない痛み」と答えた患者より多かったため、痛みの訴えは穿刺数に関係ないことになる。痛みの訴えには個人差があるため、個々の状況に応じて対応していく必要がある。
「採卵時の麻酔使用について満足でない」理由は、内服か座薬、局所麻酔は「痛みが強い」という返答があった。反面、意識があることで、「どのように採卵しているかわかるのでいい」「採卵後卵子があるかどうか教えてもらえる」など、満足できる点もみられたことから、採卵している様子を丁寧に患者に説明することが満足度につながると思われる。また、医師や看護師の声かけや励ましが安心感につながると思われるので、精神的ケアについても大切にしていきたい。

 

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