研究開発・学会発表

10月のおはな

第21回 日本IVF学会学術集会

学会名

第21回 日本IVF学会学術集会

日・場所

2018年10月27日(土)~10月28日(日) 名古屋マリオットアソシアホテル

タイトル

今、ICSIを再考する

発表者名

古橋孝祐、塩谷雅英

胚培養士が習得すべき技術のなかで、顕微授精手技は最も高度な技術の一つであることは議論の余地の無いことであろう。顕微授精手技の稚拙によって患者は得られる受精卵の数が減ることもあれば、増えることもある。このように治療結果にダイレクトに影響を与える手技であるという意味においても、その技術の習得は非常に重要である。当院では安定した高い受精率、かつ、低い変性率を達成できる顕微授精手技を3年間で習得できるよう教育プログラムを構築しており、このプログラムに基づいてトレーニングを行っている。
2000年開院以来、当院の顕微授精操作は、Conventional ICSIを第一選択としてきた。しかし、1995年にYanagimachiらによってマウスにおけるPiezo ICSIの有用性が報告され、また、1998年には、YanagidaらによってPiezo ICSIの有用性がヒトにおいても報告されたことから、当院でもPiezo ICSIの有用性を検討してきた。最初にPiezo ICSI有用性を検討したのは2003年であったが、この時はConventional ICSIと比較してPiezo ICSIの有用性を確認できず、Piezo ICSIを本格的に採用するに至らなかった。その後、2013年に平岡らによってUltra-thin Micropipetteを用いたPiezo ICSIの有用性が報告されたことを受けて、当院でも再度Piezo ICSIの有用性を検討した。その結果、42歳以上の高齢患者においてはPiezo ICSIで有意に高い胚盤胞発生率を認め、この結果は学会等でも発表してきた。この検討以降、老化した卵子ではPiezo ICSIが有効であると考え、2016年7月よりは、40歳以上の患者における顕微授精は全例Piezo ICSIを行うという治療方針としたが、期待したほどの受精率や胚盤胞発生率の向上がみられず、2017年からは再びConventional ICSIを第一選択に戻したという経緯がある。
その一方で、各施設から相次いでPiezo ICSIの有用性が報告されている現状を鑑み、当院における2016年のPiezo ICSIで期待したほどの成績が得られなかった理由を再考察した。その理由として、迅速に顕微授精を終了させるのを至上命題として掲げてきた当培養室の風土と、セッティングを精緻に行うという、Piezo ICSIの性質が融和しなかったこととが考えられた。Conventional ICSIを迅速に行うという技術を磨いてきたわれわれにとって、Piezo ICSIの操作性には違和感があり、Piezo ICSIを行うことで施行者間における技術のバラツキが大きくなってしまったと考察した。
ここで改めてPiezo ICSIに対してどのように向き合っていくか再考を行った。まずPiezo ICSIに対して皆さんはどのようなイメージを持っているのだろうか。セッティングが煩雑、手技に時間がかかるなどのイメージはないだろうか?演者は前述したようなイメージを抱いており、入職以降Conventional ICSIを約8500個実施してきたという経験があるため、自身のConventional ICSI技術に自負があったため、Piezo ICSI操作の違いに違和感を抱いたまま、払拭することが出来なかった。今回、Piezo ICSIの再検討を行うにあたり、まずはPiezo ICSIに対する先入観を払拭するため、技術の見直しをゼロから行い、技術のバラツキがないよう徹底するため手技者は一人に固定し再検討した。検討開始直後はセッティングに時間がかかり、Conventional ICSIと比較すると倍近い時間がかかってしまった。しかしながら検討を進めるとともに、作業時間も短縮され、回数を重ねる毎に事前に抱いていたPiezo ICSIへのイメージが払拭されていくのを感じた。本講演では演者が感じたPiezo ICSIならびにConventional ICSIの有用性について言及していきたい。