不妊治療の知識

4月のおはな

胚培養スタッフより

胚培養スタッフより

当院胚培養スタッフからお届けするコラムです。一般の治療ではなかなか見えにくい部分をお届けしています。

TESEについて(2010年6月)

≪TESEについて≫

精巣内から組織を採取し、精子を探す方法をTESE(Testicular sperm extraction)といいます。精液中に精子が確認できない無精子症例においてもTESEによって得られた精子で顕微授精(ICSI)を実施することにより挙児が可能となっています。

精巣内には精細管と呼ばれる細い管が集まっており、この精細管の中で精子が作られています。作られた精子は精細管腔内を移動し精巣網を経て精巣上体に集められ、精管を通って尿道へと排出されます。TESEは、麻酔下にて精巣を切開し組織(精細管)を採取します。現在は、顕微鏡下で精巣組織を観察し、よりよい状態の精細管を選別して採取する方法(MD-TESE: microdissection TESE)を主に行っています。採取した精細管は非常に細かく切り刻み、精細管の中から出てきた精子を顕微鏡下で探し出します。

無精子症は、精巣内で精子は作られているが精子の輸送路が閉塞もしくは欠損しているために精子が精液中に出てくることができない閉塞性無精子症、精巣での精子を作る働きが低下しているために精液中に精子が確認できない非閉塞性無精子症に大きく分けられます。当院でのTESE実施症例のうち、3分の1が閉塞性無精子症でありほぼ全例で精子を回収することができます。3分の2が非閉塞性無精子症であり、精子回収率は約40%です(2007年1月~12月)。

≪TESE-ICSIについて≫

TESEで得られた精子を用いた顕微授精(TESE-ICSI)は、1993年に閉塞性無精子症例において初めて妊娠例が報告されました1)。その後、非閉塞性無精子症での妊娠例が報告され2)、現在TESE-ICSIは重症男性不妊に対する治療法として普及しています。
当院では多くの場合、TESEで得られた組織を一端凍結保存しておきます。精子が回収できたことを確認できた症例に対して採卵を行い、凍結しておいた精子を随時融解してICSIに使用します。

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 ≪TESE-ICSIの成績≫

当院でのTESE-ICSIの成績を示します。

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受精率は、閉塞性無精子症が非閉塞性無精子症よりも高率となりましたが、継続培養胚あたりの胚盤胞発生率には差がありませんでした。

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着床率:移植した胚数のうち着床が確認(胎嚢確認)できた割合。
移植あたりの妊娠率:胚移植をした周期のうち胎嚢が確認できた周期の割合。(凍結融解胚移植も含んでいます。)
症例あたりの妊娠率:TESE-ICSIをおこなった患者様のうち胎嚢確認ができた割合。

移植の成績では、TESE-ICSI施行症例あたりの妊娠率が閉塞性無精子症において非閉塞性無精子症と比較して高率でしたが、着床率、移植周期あたりの妊娠率は差がありませんでした。

1) Schoysman, R., Vanderzwalmen, P., Nijs, M., Segal-Bertin, G., van de Casseye, M.: Successful fertilization by testicular spermatozoa in an in-vitro fertilization programme. Hum Reprod., 8: 1339-40, 1993.
2) Tournaye, H., Camus, M., Goossens, A., Liu, J., Nagy, P., Silber, S., Van Steirteghem, A.C., Devroey, P.: Recent concepts in the management of infertility because of non-obstructive azoospermia. Hum. Reprod., 10: 115-119, 1995.

胚培養部門 リーダー 泉陽子