不妊治療の知識

10月のおはな

胚培養スタッフより

胚培養スタッフより

当院胚培養スタッフからお届けするコラムです。一般の治療ではなかなか見えにくい部分をお届けしています。

iBISについて(2020年4月)

タイムラプス培養では、培養器内にカメラが設置されているため観察のために受精卵を培養器から取り出す必要がなく、不要な光を当てずに静かな環境で培養と画像撮影を行うことができるため、従来法と比較して受精卵にあまりストレスをかけずに培養することができます。(タイムラプス培養については、【2017年4月のコラム:タイムラプス培養とは】もご覧ください)。
当院では、以前から一部の患者様にタイムラプス培養を行っておりましたが、現在では、CCM-iBIS(アイビス) (astec社)(図1)を採用し、すべての患者様にタイムラプス培養を実施しています。
 202004①
(図1)
従来の胚培養法では決められたチェックポイントでの点の観察のみでしたが、iBISでのタイムラプス培養では培養開始から終了まで、継続した観察が可能になります(図2)。例えば培養士が不在となる深夜の様子も、翌日に画像を確認することができるため、従来法に比べてより詳細に胚の発生状況を観察することが可能になりました。
202004②
(図2)
図2のように、受精判定(2PN)から分割確認(2-cell)までの24時間の間では、
従来法では2枚の画像しか観察できませんでした。
一方iBISでは 15分ごとに、1回当たりピントを変えて複数枚(当院では11枚)の写真を撮影しているため、
{ 15分ごと(1時間に4回)× 11枚 } × 24時間 = 1,056枚
もの撮影が行われることになり、実に500倍以上の情報が得られることになります。
継続した観察によりたくさんの情報が得られる結果、胚の発生速度や割球の分割様式なども詳細に確認することができるようになります。受精卵の割球は本来1 → 2 → 4 → 8 →…と倍々に分割しますが、分割の異常として、1細胞から3細胞、あるいは2細胞から5細胞などへの直接的な分割(direct cleavage) (図3)や、1細胞から2細胞に分割した後に1細胞に戻ってしまう様子(reverse cleavage)などが報告されており、このような異常な分割が見られた胚は胚盤胞到達率が低くなることが分かっています。
202004③
(図3)
従来の胚培養・観察方法では異常な分割様式をとる胚を鑑別することは出来ませんでしたが、iBISでのタイムラプス培養では鑑別可能になるため、当院でもタイムラプス培養を用いて異常分割の解析を進めています。
培養部門 山上一樹