不妊治療の知識

9月のおはな

胚培養スタッフより

胚培養スタッフより

当院胚培養スタッフからお届けするコラムです。一般の治療ではなかなか見えにくい部分をお届けしています。

SMASについて(2021年8月)

不妊の原因の約半数は男性側にあるとされており、原因を調べることは治療方針の決定に重要であると言えます。男性側の検査として挙げられる精液検査は、精液量、精子濃度、運動率、運動の質などを測定しています。男性の精液の状態は変動するケースもあり、基準値より低値であっても、再度検査を行って問題ないとされることもあります。

当院では2016年6月より、Sperm Motility Analysis System(略して“SMAS”と言います)という精密機器を使用し、精液検査を行っています。SMASは、運動精子・不動精子を判別し、精子濃度・運動率を短時間で正確に計測することができる国産の精子運動解析システムです。
精子の運動性が、不妊症の重要な原因になり得ると最近明らかになってきましたが、精子の運動性や運動の質は人の目によって判断することは難しく、その詳細については調べられていませんでした。見かけの運動率が高くても、高速直進する精子が少ない場合には、妊娠にたどり着く可能性が低くなると考えられています。
当院の精液検査においても、以前は胚培養士が目視法により精子数をカウントし精子濃度、精子運動率等を算出してきました。目視法は簡便に精子数を測定出来ますが、主観的な評価になるため検査者間で差が出ることもあり、また詳細な運動解析は不可能であるという問題点がありました。数千万匹の運動精子をカウントするには検査者の熟練度及び時間を必要とし、検査者の主観、個人差・経験によって検査結果にばらつきが生じてしまうという課題がありました。
【写真】

2021.8コラム①

WHOマニュアルや日本のガイドラインではヒトの目視による方法が推奨されていますが、これらの問題を改善するためには、精密機器を用いて精液検査を行うことが望ましいと考えられます。
SMASは、不妊症の大きなファクターである精子の数と運動量を、高精細カメラと最新鋭のソフトウェアアルゴリズムで自動解析できます。そのためSMASを導入することにより、従来の検査内容だけでなく精子の運動性・運動の質についても正確に計測でき、かつ短時間で結果を出せるようになったため、患者様により正確で詳細な検査結果をお伝えできるようになりました。
また、SMASの測定によって得られる複数の検査項目を用いることで、新たな評価項目を算出することが可能になりました。この評価項目を「精子運動性指数算出値Sperm Motility Value(以下SMVと言います) と呼んでおり、当院が独自に導き出した式によって算出した数値であり、検査時における精子の総合的な評価に用いられています。

患者様の中には、採卵をされる際に受精方法について悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。受精方法については患者様のご希望をお伺いしました上で、採卵当日の精液検査の結果、お預かりした卵子の数、過去の治療歴などからご提案し、診察にてご相談させて頂いております。
また、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、精液検査に関しては、通常の検査項目に加えて「精子受精能」を考慮しています。
「精子受精能」は、先ほどのSMASでの測定によって得られたSMVを含む複数の検査項目から、当院独自の方法で算出している数値になります。当院で過去に集積したデータから、SMASにおける検査項目の中で受精に大きく関連しているものを調べ、それらから導き出した式によって算出しています。そのため、より受精に繋がりやすいと考えられる受精方法を検討する上で、重要な指標になっています。

患者様のご希望を考慮し、おひとりおひとり、またそれぞれの周期に合わせた受精方法を提案させて頂いておりますので、採卵後の診察にて医師とご相談頂き、ご自身がご納得した上で治療を進めさせて頂ければと考えております。
今後も一人でも多くの患者様のお力になれますように精進して参ります。

 

培養部門 横田 梨恵