不妊治療の知識

5月のおはな

胚培養スタッフより

胚培養スタッフより

当院胚培養スタッフからお届けするコラムです。一般の治療ではなかなか見えにくい部分をお届けしています。

SDF検査について(2022年3月)

前回のコラムでは、精子の酸化ストレスについてお話しました。前回のおさらいになりますが、精子が酸化ストレスを受けると、頭部に存在するDNAが損傷(断片化)するといわれております。

通常、当院で行われている精液検査は、基礎検査といわれ、運動精子や非運動精子の数を測定します。しかし、通常の精液検査では、形や動きが正常な精子の数を測定することができても、DNAが損傷しているかどうかを見ることができません。見た目上では分からない精子の状態を調べることを機能性検査といい、DNA損傷がある精子の割合を測定する検査、SDF(sperm DNA fragmentation)検査はその検査のひとつに分類されます。

SDF検査は、精子のDNA損傷を検出する試薬を用いて行います。その後、蛍光染色を行うことにより、DNA損傷がある精子と正常精子を区別します。更に、フローサイトメーターという解析装置で蛍光度を解析することにより、SDF値の測定を行います。

2022.3図1

 
SDF検査をご希望される場合は「精子精密検査」でご予約をおとりください。通常の精液検査に加えて、SDF値と精液中の酸化ストレスの程度をお調べします。検査結果は以下の図のような用紙をお渡しいたします。異常値は各施設の測定方法によって異なりますが、当院では16%以上としています。

2022.3図2

         結果用紙

 

SDF値が高いという結果が出た場合は、当院のメンズクリニック(男性不妊外来)を受診されることをお勧めします。またARTを行う際は、精子に対するダメージが通常の調整より少ないとされる、遠心分離を用いない調整ができる「ミグリス」での調整を医師から提案させていただく場合があります。【ミグリスについては過去のコラムをご参照ください。】ミグリスを用いて調整した精子は、SDF値をかなり低くすることができますが、通常の調整より精子濃度が下がることが多いので顕微授精になる確率が高まります。

通常の精液検査では濃度や運動率に問題がないけれども、今までの治療でよい結果が出ていない方や、何度も流産を繰り返してしまう方、より詳しい精子の状態が気になる方にお勧めしています。男性側の要因を調べる検査は女性側と比べて少ないですが、こういった検査も選択肢の一つとしてご検討ください。

 

培養部門 鈴木理恵