はなぶさ ブログ

2月のおはな

2段階胚移植について(その5.)

話を元に戻しましょう。

 

「着床機構の解明」に当たって最初に取り組んだのは、試験管内で着床を再現する、ということでした。

本来、いうまでもなく受精卵の着床は子宮の中で起こりますので、顕微鏡でその過程をリアルタイムに観察することはできません。

試験管内で着床が起すことができれば、その過程を顕微鏡で観察できます。そうなれば、あとは色々な条件を変えることで着床がどうすれば起こりやすくなるか、反対にどのような時に起こりにくいのか調べることができます。

実験系に選んだのは、マウスでした。

その頃には、マウスの体外受精のトレーニングは終わっておりましたので、マウスの受精卵を培養する技術には自信がありました。

あとは、この受精卵を用いて着床過程を試験管内で再現することです。

しかし言うは易しで、一筋縄では行きませんでした。直径100ミクロンに満たない受精卵を培養してもなかなか着床してくれません。

どうしたら着床を再現できるのか、途方に暮れつつ、この頃はほとんど毎日野田助教授と大学生協で昼食を一緒にさせていただきながらディスカッションをしていたように思います。

 

野田助教授はアイデアの宝庫でしたので、色々な方法を試しましたが、数ヶ月間は失敗の連続でした。

しかしながら、私も野田助教授にも諦めムードが漂い始めたある日、遂に受精卵が着床を開始する様子を顕微鏡で確認できたのです。

すぐに、野田助教授に報告したい気持ちを抑えつつ、その後数日間は同じ現象を再現できることを確認しました。

そして間違いないと確信したのちに野田助教授に報告しました。

野田助教授も大喜びしてくださいました。

「ここ数日、君の表情に変化があったのできっと実験がうまく行きかけているんだと思っていたよ」とおっしゃってくださいました。

こうして試験管内で着床の最初の段階を再現する実験モデルが完成したのです。

 

さて、これからはいよいよこのモデルを用いて着床機構を解明することになります。

2段階胚移植について(その5.)に続く。

(文責:[理事長] 塩谷雅英)

 

前回までの記事も併せてご覧ください

2段階胚移植について(その1.)

2段階胚移植について(その2.)

2段階胚移植について(その3.)

2段階胚移植について(その4.)