はなぶさ ブログ

10月のおはな

タイムラプス培養で良好胚の選別はできるの?

体外受精を行った場合、どの受精卵から移植するかの順番決めに関しては、患者さんと医師、胚培養士が相談して決めていく場合が多いと思いますが、一般的には受精卵や胚盤胞の形態を見て判断している施設が多いと思います。
ただ、見た目の判断だけではなかなか正確な選別が出来ない事も多く、より正確な判断材料が求められています。

本日はその工夫の一つであるタイムラプス培養について紹介したいと思います。

下記ページより当院で行っているタイムラプス培養の紹介も確認できます。
https://www.hanabusaclinic.com/about/treatment/advanced/embryoculture/

ただ、実際にこの動画で何が分かるのでしょうか?
これに関しては、まだ統一された見解はありませんが、下記論文に一つの活用例について提案されています。
Direct Unequal Cleavages: Embryo Developmental Competence, Genetic Constitution and Clinical Outcome. (直接分割:胚の成長能、遺伝的組成と臨床成績)
2016年にPlos One誌に掲載された論文です。オープンアクセス誌ですので下記より誰でも全文確認できます。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5132229/
この研究では21261個の胚をタイムラプスで観察した結果を検討しています。DUCとはダイレクト分割の事で本来1細胞、2細胞、4細胞、8細胞と増えていくところを1細胞から3細胞などのように途中を飛ばして直接分割する胚を指します。

結果を見てみると、上記グラフでは左の方でday3の初期胚移植の成績を比べていますが、ダイレクト分割のあった胚と比較して通常分割の胚では有意に妊娠率、出産率が高くなっています。同様に右端の胚盤胞移植の場合でも直接分割のあった胚と比較して正常分割の方が有意に妊娠率、出産率ともに高いという結果でした。

続いて上の表は、それぞれの胚に着床前診断を行って正常胚、異常胚、モザイク胚の割合を調べたものです。(着床前診断の概要は下記を参照ください。)
https://www.hanabusaclinic.com/about/treatment/advanced/diagnosis/

表の結果をみると、day3の着床前診断では正常胚の割合がダイレクト分割胚で18.6%、正常分割胚で45.6%と有意に正常分割胚の方が高くなっています。ただ、day5、day6の胚盤胞での着床前診断の結果を見ると、正常胚の割合がday5で56.3%vs51.4%、day6で35.6%vs33.8%ということで胚盤胞まで育ってしまえば、ダイレクト分割の影響はなくなるようです。

ではなぜ妊娠率に差が出てくるのかというのを説明したのが、上のグラフになります。緑のバーが正常分割胚で他のバーがダイレクト分割胚のデータになりますが、左から2番目の良好胚盤胞発生率を見てみるとダイレクト分割胚は正常分割胚に比べて胚盤胞発生率が低いのが分かります。つまり、胚盤胞の中での着床前診断正常率は変わらないけれど、そもそも胚盤胞まで育つ胚が少ないので、結果として妊娠率が下がっていると考えられています。
ということで、本論文の結論は、ダイレクト分割胚では有意に胚盤胞率、妊娠率が低く、初期胚移植は行うべきではない。ただ、胚盤胞まで育つのであれば良好な結果も期待できるので胚盤胞まで培養すべきだろう。となっています。
長くなってしまいましたが、このようにタイムラプス培養は従来得られなかった情報を得られる可能性があり臨床上有用な場合があります。比較的新しい技術であり、評価法など確立されていない部分もありますが、今後ますます発展していく技術と考えています。
(文責:医師部門 江夏徳寿、 理事長 塩谷雅英)

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