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2月のおはな

遺伝子編集について―その5 ヒトの受精卵の遺伝子編集

2015年、ヒト受精卵に遺伝子編集を行う研究が、ついに中国の科学者により行われました(Protein Cell. 2015 May; 6(5): 363–372)。

「ついに」と言ったのは、技術的にはそれほど難しくないので、誰がそれをやるかが研究者の間での関心事だったからです。

その発表はβ-グロビン遺伝子の異常で発症するサラセミアという貧血の治療を目的とし、遺伝子編集によりβ-グロビン遺伝子をδ-グロビン遺伝子に変換すること試みたものです。

もちろん倫理的に問題であることは彼らも認識していましたから、正常なヒト胚ではなく、通常廃棄になる(3PN胚)用いて研究を行いました(図)。

【図の説明】卵細胞の中に3個の核が見えます。このような胚は、異常な受精胚なので通常は廃棄されます。

この研究では、このような異常胚のβ-グロビン遺伝子をδ-グロビン遺伝子に置き換える遺伝子編集を行いました。

86個中4個で、目的の遺伝子の置換が認められました。

最初、著者らは‘Nature‘ やScience‘といった権威ある科学雑誌に投稿しましたが、廃棄胚でもヒト胚を用いたことは倫理的に問題である、という理由で掲載は許可されませんでした。それで ‘Protein Cell‘という中国の科学雑誌から発表されました。

経緯はともかく、この発表のポイントは研究結果にあるのではなく、ヒト胚に遺伝子編集を「やった」、「やってしまった」ことにあります。

議論の口火が切られたわけです。

パンドラの箱が開かれたといってもいいかもしれません。

科学者、倫理学者、法律家などが国際的な組織を作って議論しています。

もちろん一般の人も様々な意見を述べています。

みなさんはヒト胚の遺伝子編集についてどのように思われますでしょうか。

 

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(文責:[研究開発部門] 長谷川 昭子 [理事長] 塩谷 雅英)