はなぶさ ブログ

5月のおはな

不妊治療でよく使われる点鼻薬のお話 その2

不妊治療でよく使われる点鼻薬のお話 その1 では、「点鼻薬」ブセレリンというGnRHアゴニストは不思議な薬で、使い方によって作用が全く異なるというお話をして、まずはフレアーアップという作用と使い方について紹介しました。

前回も少し触れましたが、この使い方は保険適応になっておらず、いわば不妊治療特有の使い方と言えるかもしれません。

ブセレリンの添付文書を見ると、適応症(効能又は効果)の欄には、子宮内膜症や子宮筋腫ということが書かれています。
逆に先に説明したフレアーアップを利用した使い方は記載されていません。

これはどういうことなのでしょう。

子宮内膜症とは、子宮の内側にしかないはずの子宮内膜が、子宮以外の場所(卵巣や腹膜など)にできてしまい、エストロゲンによって増殖と剥離(はくり)を繰り返して、さまざまな痛みを引き起こしてしまう病気です。

子宮の内側にある子宮内膜は、生理の時に月経血として体の外に出ていきますが、子宮以外の場所で増殖した子宮内膜はお腹の中にとどまってしまい、炎症や癒着(ゆちゃく)を起こして痛みの原因になります。
また、それらが不妊の原因になっていることもあります。

 

ブセレリン(GnRHアゴニスト)は投与初期には一過性にフレアーアップによりFSH、LHが上昇しますが、繰り返し投与することで、脳の下垂体はGnRHの命令を受け取れなくなり逆にFSH、LHの分泌が止まってしまいます。
この現象を受容体のダウンレギュレーションといいます。
子宮内膜症の治療にはこの作用を利用しています。ブセレリンを繰り返し投与している間はFSH、LHが分泌されませんので、卵胞の発育も排卵も起こらなくなります。そのため、卵巣からのエストロゲン分泌も少なくなり、子宮内膜症の症状が軽減される仕組みです。

 

これが本来のブセレリンの保険適応となる効能効果になっています。
フレアーアップを利用した使用方法は、保険適応外となるため自費の治療になります。

そのほか、不妊治療でよく使われるケースでは、排卵誘発法のショート法やロング法における排卵の抑制にもブセレリンのダウンレギュレーションを利用した使い方がされていますね。

 

こうした使い方の際は、使い忘れがあると十分に効果が期待できなくなる可能性があるので、お出かけの際に携行を忘れないよう気をつけるようにしましょう。

ブセレリンの副作用ですが、不妊治療での使い方では「ほてり」や「肩こり」、「頭痛」といったものが時々見られます。

ブセレリンを使用される時はこのような特徴を知っていただき、より治療に対するご理解も深めていただく一助になりましたら幸いです。

次回は、不妊治療でよく使われる「ピル」のお話しをしたいと思います。

 

以前の記事はこちらからお読みいただけます。

不妊治療でよく使われるクロミッドのお話

不妊治療でよく使われるレトロゾール(フェマーラ)のお話

クロミッド or レトロゾール その違いは? その1

クロミッド or レトロゾール その違いは? その2

クロミッド or レトロゾール その違いは? その3

不妊治療でよく使われるHMGのお話 その1

不妊治療でよく使われるHMGのお話 その2

不妊治療でよく使われる点鼻薬のお話 その1

 

(文責:[生殖医療薬剤部門] 山本 健児 [理事長] 塩谷 雅英)