はなぶさ ブログ

5月のおはな

不妊治療でよく使われる膣坐薬のお話 なぜ膣内投与?

今回は生殖補助医療で使われる黄体ホルモン(プロゲステロン)の膣坐剤のお話をします。

まずは黄体ホルモンについて少しお話ししましょう。
これまでのテーマ「お薬の話」の中でも女性ホルモンについてはよく出てきましたが、黄体ホルモンであるプロゲステロンは排卵後に卵巣から分泌されるホルモンで、もうひとつの女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)とともに、受精卵の着床に備えて子宮内膜の状態を整える働きをします。

よく「ふかふかのベッド」を作るという表現がされることもありますね。
ですので、このホルモンが不十分であると、せっかくの受精卵がうまく着床できないことになります。

合成黄体ホルモンの薬は、内服する錠剤もありますが、天然型のプロゲステロンは膣内に投与する形になっています。

フェリング・ファーマ 「ルティナス膣錠を使用される方へ」より引用
なぜ膣内に投与するのでしょう。

プロゲステロンを内服すると、消化管から吸収されたあとすぐに肝臓を通るためそこで代謝(排泄されやすいように別の形に変えられること)を受けてしまいます。少し専門的な言葉でになりますが、これを初回通過効果といいます。
実際に膣用カプセルは開発時には内服する試験もされましたが、やはり効果が十分ではなかったため、膣内投与することで開発がすすめられました。

経腟投与では、膣の粘膜から吸収され血中から全身循環に入るものと、対向流交換といって直接子宮へ向かう動脈への経路があるとも言われ、より子宮でのプロゲステロンの濃度が高まると考えられています。

もうひとつ、初回通過効果を回避できる投与法に注射がありますが、これは痛みを伴いますし、自分でできないなど簡便ではありません。
そのようなわけで、プロゲステロン製剤は膣座薬となっているのです。
次回はプロゲステロン膣座薬の歴史や各社製剤の特徴などを紹介したいと思います。

 

以前の記事もご参照ください

テーマ「お薬の話」

 

(文責:[生殖医療薬剤部門] 山本 健児 [理事長] 塩谷 雅英)