知ってなるほどホルモンと月経のお話 その7 月経周期における各ホルモンの役割
図1に月経周期における各ホルモンの血中濃度の動きを示しました。
皆さんも多分どこかで見られたことがあるのではないでしょうか。
この図を見ながらそれぞれのホルモンの働きをみていきましょう。
まずFSH(卵胞刺激ホルモン)からみていきます。
FSHは月経が始まる直前から次第に上昇していきます。
FSHは卵胞の発育とエストロゲンの産生、分泌を促すホルモンでしたね。
FSHが上昇してくるとこれが卵胞を刺激するため、卵巣では卵胞が次第に発育して大きくなっていきます。
卵胞の発育にしたがって卵胞より分泌されるエストロゲンも次第に上昇していきます。
そして月経開始の10日目を過ぎる頃からエストロゲンは急上昇します。
このためFSHはネガティブ・フィードバック作用を受け一時的に下がるのですが、エストロゲンがピークを迎えた直後から特にLH(黄体形成ホルモン)が急上昇します。
エストロゲンが急上昇することによってLHがそれまでの10〜20倍もの血中濃度となるのです。
これがエストロゲンのポジティブ・フィードバック作用です。
LHは急上昇するけれどもほぼ1日で元の状態に下降するためLHサージ(大波)と呼ばれています。
LHの最も重要な役割は排卵を起こすことでしたね。
この大量に分泌されたLHが、その時発育・成熟し直径約2cm(1円玉の直径)になっている卵胞に働いてこれを破裂させ、卵子を排出させるのです。これが排卵です。
LHのピークの約36時間後に排卵は起こるとされています。
市販されている排卵のチェック薬はこのLHサージを検出していちばん妊娠しやすい時期を知ろうというものです。
最も妊娠しやすい時期は排卵の1−2日前と言われていますので、排卵チェック薬で陽性と出ればその日かあくる日がタイミングのチャンスということになります。
排卵を起こした後の卵胞は赤体(出血のため赤く見える)を得て黄体へと変化していきます。
黄体とはその切断面を見ると文字通りまっ黄色で、そのためにこのように呼ばれているのです(図2)。
排卵が起こると、これまでほとんど分泌されていなかったプロゲステロンが黄体で産生され始め、血中濃度が急上昇してきます。
エストロゲンも排卵後一時的に下降しますが、黄体の形成とともに再び上昇してきます。
したがって、排卵後月経までの間の期間はエストロゲンもプロゲステロンも高い状態が保たれます。
このため、下垂体へのネガティブ・フィードバックがかかり、FSH、LHは低値となります。
妊娠しない場合、黄体の寿命はほぼ2週間です。排卵後10日をすぎると黄体の機能は低下し、これまで高値であったエストロゲンやエストロゲンは急激に下降(消退)します。
この2つのホルモンの下降により、いわゆる消退性出血としての月経が始まります。
また同時にネガティブ・フィードバック作用が弱くなるため下垂体からのFSHの分泌が増え、これが次周期排卵する卵胞の発育を開始させることになります。
以前の記事もご参照ください。
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(文責:[医師部門] 片山 和明 [理事長] 塩谷 雅英)