採卵のための排卵誘発剤で刺激、妊娠に悪影響を与えないのか? ①
体外受精や顕微授精を行う際に、採卵にむけて排卵誘発を行っていくことが一般的です。
排卵方法には大きく分けて自然法、マイルド法、一般法(ロング法、ショート法、アンタゴニスト法)とありますが、その違いは刺激の注射(FSH製剤)をどれくらい使っていくのかという点にあります。
上の表に示す様に、注射をたくさん打って刺激を強くすると、その分だけ多くの卵胞が発育し一度の採卵で多くの卵子を回収する事ができます。
以前、たくさん採卵できた時の個々の卵子の質は悪くなったりしない?という記事でご紹介した様に、
たくさんの卵子が採れた場合でも個々の受精卵の染色体正常率は変わらないと考えられていますので、1回の採卵で多くの卵子を得られた方が良い受精卵に巡り合える可能性は高くなると考えられます。
それでは、実際の妊娠率はどうなのでしょうか?排卵刺激によって身体の負担が増えた分、着床しにくくなったりしないのでしょうか?
今回からはそのような疑問に答える研究を紹介したいと思います。
High FSH dosing is associated with reduced live birth rate in fresh but not subsequent frozen embryo transfers
(高用量のFSH製剤は新鮮胚移植において出産率を低下させたが、凍結胚移植には影響なかった。)
これはアメリカのMunch氏らが2017年にHuman Reproduction誌に報告した研究です。
この研究では862名の女性を対象に935周期の新鮮胚移植と1274周期の凍結融解胚移植を使用したFSH製剤の量で群分けして調査しています。
上の表は各群の実際のFSH製剤になります。
全体的にちょっと刺激量が多い印象なのはアメリカンサイズだからでしょうか。
低刺激群といえども平均170単位使用しており日本の低刺激法よりは使用量が多いと思われます。
次回はそれぞれの群の患者背景を見ていきましょう。
以前の記事もご参照ください
(文責:医師部門 江夏 徳寿、理事長 塩谷 雅英)