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6月のおはな

知ってなるほどホルモンと月経のお話 その11 単胎(単一排卵)のひみつ

ふつう人間(ヒト)では、一度の妊娠でひとりだけ(単胎)の赤ちゃんを宿し、ひとりだけの赤ちゃんを産みますよね。

なぜ、イヌやネコのようにたくさんの子どもを妊娠し、たくさんの子どもを産まないのでしょう。

 

それは、ヒトでは1周期に1個だけの卵胞(1個だけの卵子)しか排卵しないからです。

では、なぜ1周期に排卵する卵胞が1個だけになるのでしょうか。

 

今回はそのしくみについて説明します。
実は、月経が始まる時期には、毎周期卵巣には複数の卵胞が発育に備えて準備しています。

その数は、通常若い人では多く、年齢が上がるほど少なくなります。

また、AMHの値が高い人ほど多く、この値が低いほど少なくなります。
図1をご覧ください。

 

 

 

月経の開始時期、下垂体からは、卵胞を刺激するホルモンであるFSHが急激に上昇してきます。

このFSHの刺激を受けて、スタートラインに立っている卵胞は一斉に発育を開始するのです。

 

しかし、同時にスタートしたからといって発育のスピードはどの卵胞も決して同じではないのです。

必ずそのスピードに差がつき、卵胞の大きさにも差がつきます。
卵胞が発育し、大きくなるにしたがって卵胞からはエストロゲンの分泌も増え、その血中濃度も上昇していきます。

この時、だいたい月経の7〜8日目ぐらいですが、最初にある一定の大きさに達した卵胞が急激に大量のエストロゲンを分泌するようになります。

 

この卵胞のことを主席卵胞と呼んでいます。
この主席卵胞から分泌される大量のエストロゲンが視床下部や下垂体に働き、これまで血中濃度の高かったFSHの血中濃度を、ネガティブ・フィードバック作用によって抑制し、急激にその濃度を低下させてしまいます。

この時期、主席卵胞はFSHに対する感受性を増し、少量のFSHの刺激を受けるだけでもどんどん発育していけるようになっています。

 

しかし、まだ一定の大きさに達していない主席卵胞より小さな卵胞は、発育を続けるためにまだ多くのFSHの刺激を必要としており、その刺激が十分でないと発育が停止してしまいます。

結果的にこれらの卵胞は全て閉鎖(死滅)してしまい、最終的にさらに発育し、排卵にまで至る卵胞は主席卵胞はだけになってしまうのです。
以上がヒトにおいて、1周期に1個の卵胞だけが排卵に至るしくみということになります。
 

では実際、途中でFSHの血中濃度が下降しないようにFSH製剤(HMG)を投与してみたらどうでしょう。図2をご覧ください。

 

月経直後よりFSH製剤を毎日注射により投与すると、FSHの血中濃度が下がらず、閉鎖してしまう運命にあった多くの卵胞が主席卵胞に従うように発育していくことになります。

 

これが、体外受精時に複数の卵子を得る目的で行う卵巣の過排卵刺激法です。

当院で行なっているアンタゴニスト法、ショート法、ロング法がこれに当たります。

 

ただし、これらの方法を用いた場合、一度にたくさんの卵胞が育ってきますので、いわゆる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)に注意する必要があります。
卵巣過剰刺激症候群については、また機会をみて説明したいと思います。
 

以前の記事もご参照ください。

知ってなるほどホルモンと月経のお話 その1 女性ホルモンとは

知ってなるほどホルモンと月経のお話 その2 エストロゲンは男性ホルモンからできるって本当?

知ってなるほどホルモンと月経のお話 その3 エストロゲンという名称の由来は?

知ってなるほどホルモンと月経のお話 その4 エストロゲンとプロゲステロンは子宮にどのように働く

知ってなるほどホルモンと月経のお話 その5 エストロゲンとプロゲステロンは子宮の入口でも働いている

知ってなるほどホルモンと月経のお話 その6 分泌をコントロールするフィードバック機能について

知ってなるほどホルモンと月経のお話 その7 月経周期における各ホルモンの役割

知ってなるほどホルモンと月経のお話 その8 妊娠するとどうして生理(月経)がなくなるの?

知ってなるほどホルモンと月経のお話 その9 思春期と初経について

知ってなるほどホルモンと月経のお話 その10 なぜ女性は閉経するの?

 

ハナブロテーマ 「 お薬の話」

 

(文責:[医師部門] 片山 和明 [理事長] 塩谷 雅英)

 

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