はなぶさ ブログ

2月のおはな

『ハナブロQ&A』 (45歳、体外受精の治療プランについて)

ご質問
はじめまして、私はニューヨーク在住の45歳で、来月、初めてのIVFを予定しているものです。
日米では、たぶん不妊治療のアプローチも違うかとは思いますが、一度、こちらの先生のご意見も伺いたくてメッセージしております。

先月の生理3日目の血液検査で、FSH 10.7、AMH 0.262 でした。身長は169cm、体重は63kg。
年齢相応の数値と言うことで、IVFを行うということになり、DHEAとCoQ10を1カ月前から飲むよう指示されています。
トリートメントプランを出していただいたところ、薬の量は最大量マキシマムドーズで行い、つまり日本で言う高刺激法だと思うのですが、それでも高齢なので3つ採卵できれば上出来でしょうと言われました。

 

採卵から2~3日で新鮮胚移植をするそうで、アメリカでは珍しく、着床前検査に否定的なドクターのためPGD,PGSはしないとのことです。(モザイクエンブリオでもアブノーマルとみられて、ただでさえ少ない採卵のエンブリオを無駄に出来ないし、着床後にノーマルになることもあると言う理由です。遺伝子検査は着床後、血液検査で行うと言っておりました。)
ただ別のクリニックにコンサルテーションに行った時、高齢者は高刺激でも低刺激でも採卵できる卵子の数はそれほど変わらないので低刺激法にした方がいいし、高齢だからこそ、奇形児や流産の可能性も高いので着床前遺伝子検査はした方がいいと、つまり凍結胚移植で、採卵とは別のサイクルで、着床のために体を整えてから次移行のサイクルで移植だそうです。

この真逆なトリートメントプランに、とても迷っております。

こちらのハナブロでも、卵巣予備能が低い場合ではマイルド法(低刺激法)を勧められて、高刺激でも低刺激でも、採卵できる卵子の個数に、それほど変わりはないと書かれてありましたし、
私の心配は、高刺激法で採卵した後、採卵にフォーカスしてホルモン調整された体が、新鮮胚移植を直ぐにして着床を持続持続させる状態でいられるのかも心配です。凍結して、体を休めてから移植した方がいいのではないかと考えてしまいます。

45歳と高齢のため、これが最後のIVFになるかもしれないので、この年齢で、このホルモン数値の場合、マキシマムドーズの高刺激法で、PGD、PGSをせず、新鮮胚移植をする方がいいのか、ミニマムドーズ(低刺激法)でPGD,PGSをして凍結胚移植にするか?

英ウィメンズクリニック様でしたら、どのようにお考えで、どのようなトリートメントを勧めるのか、ぜひ、お伺いしたいと思います。

付け加えの質問になりますが、薬の量の他にも、高齢なので着床前診断をした方がいいと別のクリニックで言われたのですが、となると凍結胚移植ということになりますが、高齢なのでエンブリオが凍結出来る5日も待てないであろうと、採卵から2〜3日で新鮮胚移植した方が培養液よりも体内の方が育つ可能性が高いと今のクリニックで言われ混乱しています。
高齢なので、着床しやすいように新鮮胚移植の方がいいのか、高齢だからこそ染色体異常の可能性が高いので着床前診断をするべきか?
こちらも合わせてご意見伺えたらありがたいです。
よろしくお願い致します。

お答え

 

いつもハナブロをお読みいただきありがとうございます。

ご質問をありがとうございます。

ご質問は以下の4つになりそうですので、それぞれ回答します。

①採卵周期は高刺激と低刺激のどちらで行うべきか
②PGTすべきか
③新鮮胚移植すべきか、凍結融解胚移植すべきか
④初期胚移植すべきか、胚盤胞移植すべきか

①採卵周期は高刺激と低刺激のどちらで行うべきか
45歳という年齢を考慮すると、当院では低刺激をお勧めするケースが多いです。それは、質問者様が書かれている通り、「高刺激でも低刺激でもあまり個数が変わらないから、それならば負担の少ない低刺激を選択する」ということです。

もし高刺激でたくさん卵胞が発育するなら、その方が望ましいです。
卵胞発育がたくさん見込めるかどうかの予測方法としては、AMHも参考にはしますが、月経期初期の胞状卵胞数(AFC)の方がより鋭敏です。
実際のところ、45歳の場合AFCは少数であることが多いので、低刺激法をお勧めすることが多くなるわけです。

治療周期の2〜3日目に、胞状卵胞数(AFC)が3〜5個以上あれば、高刺激を選択してみても良いかもしれません。

胞状卵胞数(AFC)が1〜2個ならば、低刺激をお勧めします。

②PGT-Aすべきか
これは個数にもよります。例えば、10個採卵できたなら検討する価値がありますが、2,3個であればあまりお勧めしません。
PGT-Aのメリットとデメリットを考えてみましょう。
メリットは、異常胚を移植せずにすむこと。

デメリットは、検査による胚へのダメージが起こり得ることと、胚盤胞まで培養する必要があること(初期胚移植ができない)、凍結操作を必要とすることなどです。

メリット、デメリットを良く考慮して治療方針を決める必要があります。

 

当院では、卵子は年齢とともに脆弱になりますので、なるべくストレスを与えないことが大切と考えております。

卵子のストレスとして、体外での長期間の培養、PGT-Aに必要なバイオプシー、凍結・融解操作、などを上げることができます。

これらのストレスをなるべく避けることが大切です。

従いまして、ケースバイケースではありますが、当院では44才を過ぎた患者様の治療方針としまして、凍結をさけるため新鮮胚移植、そして長期間の体外培養をさけるため初期胚移植をご提案することが多くなります。
「高齢だからこそ、流産の可能性も高いので着床前検査はした方がいい」とのご意見も間違いではありません。

着床前検査をせずに移植し妊娠できた時にはやはり、染色体異常のリスクが心配になるかもしれません。

近年は、妊娠初期に血液検査で胎児の染色体異常を調べるNIPT検査を受けることができますので、遺伝カウンセリング等を利用してこちらもご検討ください。

③新鮮胚移植すべきか、凍結融解胚移植すべきか
上述しましたように、高齢患者様の卵子・受精卵にはなるべくストレスを与えない、という観点から、当院では凍結しないで新鮮胚移植をお勧めしていることが多くなります。

ただし、採卵周期刺激方法によっては子宮内膜にマイナスの影響がおよぶ場合があるので、その場合は凍結融解胚移植の方が良いこともあります。

やはり、ケースバイケースですね。

④初期胚移植すべきか、胚盤胞移植すべきか
この点につきましても、上述しましたように、高齢患者様の卵子・受精卵にはなるべくストレスを与えない、という観点から、当院では長期間の体外培養を避けて、初期胚移植をお勧めしていることが多くなります。

 

ただし、採卵できた個数、そして培養状況によります。本来受精卵は卵管で発育します。

従いまして、胚(受精卵)にとっては、卵管内がベストの環境です。培養液や培養技術は進歩し卵管内の環境に相当近づいてはいますが、いまだ体外培養の環境は決してパーフェクトとは言えません。

 

では、子宮内と培養液の中ではどちらが良いのでしょうか?一般的には培養液の方が良いと考えますが、こちらもケースバイケースで、子宮内の方が良い場合もあります。

 

これらのことをトータルに検討して、初期胚移植すべきか、胚盤胞移植すべきか、PGTすべきか—などを考えます。

以上より、質問者様の言葉をお借りしてまとめると、
「ミニマムドーズ(低刺激)で、PGTはせず、初期胚で新鮮胚移植する」
という方法をお勧めする可能性が高いです。

ご参考になりましたら幸いです。
質問者様の治療がうまくいきますよう、心から祈っております。
 

文責:[医師部門] 江夏 国宏 [理事長] 塩谷 雅英

 

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