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10月のおはな

亜鉛は精子の受精能を阻害する!? 多精子受精を防御する亜鉛の働き

亜鉛は重要な栄養素として私たちの健康に欠かせないものです。

一方、精漿中に豊富に含まれるので、男性不妊症に効果が期待され、サプリとして摂取されることがあります。

亜鉛が不足することによって、精子の形成など男性の性腺機能不全が生じるなど、不妊症との密接な関係があります。

亜鉛の精子の活性化の効果については、さまざまなネットなどでもさまざまな記述がみられますね。
そこで、今回は精子の受精と亜鉛に関する研究について紹介したいと思います。

最近の研究で、亜鉛は多精子受精を防御するため、精子の受精能力を阻害する働きがあることがわかってきました。

Dev Cell. 2018 46(5):627-640 に報告された、

“Glycan-Independent Gamete Recognition Triggers Egg Zinc Sparks and ZP2 Cleavage to Prevent Polyspermy by Tokuhiro K, Dean J.”

を紹介します。
 

この論文では、まず亜鉛の効果を体外受精で調べています。

図1に示すように、亜鉛を添加しない培養液で体外受精を行うと、多数の精子が囲卵腔にまで進入しました。

しかし、亜鉛を添加した培養液で受精を行うと、囲卵腔にまで達する精子の数が減少しました。

 

亜鉛によって精子の透明帯を貫通する機能が抑制されたことがわかります。

 

 

 

多精子受精の阻止は、以前、{透明帶の働き}のシリーズでもお話しました。(記事は下のリンクからお読みいただけます)

 

受精が成立すると受精した卵子から酵素が放出され、透明帯に変化が起こって余剰の精子は透明帯を進入できなくなるというものでした。

しかし、酵素反応によって透明帯に変化が起こるには、数分から数時間の時間がかかります。

これでは瞬時に多精子受精を防御できません。

もっと素早く余剰の精子をブロックするための仕組みとして、亜鉛の放出があることが明らかになりました。

受精した卵子は表層顆粒という袋から亜鉛を放出します。

これですと、完全ではありませんが数秒の単位で多精子受精を防ぐことができます(図2)。

 

詳しいメカニズムはまだ不明ですが、素早く精子の動きを止める亜鉛と、それを確実なものにする酵素反応の2段階法で多精子受精が防御されているということになります。
 

 

 

 

亜鉛が精子の受精を抑制するなら、なぜ精漿中に豊富に存在するのでしょう。

 

これは推測ですが、精子は受精能を獲得して先体反応を起こして、初めて卵透明帯に進入できます。

つまり精子の状態が、射出直後と卵管に到達したときで、異なると考えられます。

 

同じ精子と亜鉛の関係でも、精子の状態が異なれば作用も異なるということではないでしょうか。

 

 

 

以前の記事もご参照ください

透明帯のおはなし―①そもそも透明帯って必要なの?

透明帯のおはなし―②もしも透明帯がなかったら・・・

透明帯のおはなし―③ヒトでも発見!透明帯遺伝子のない卵子

透明帯のおはなし―④「透明帯が硬くなる」ってどういうこと?

透明帯のおはなし―⑤卵子の大きさは動物によってどれくらい違う?

透明帯のおはなし―⑥哺乳類以外の動物にも透明帯はあるの?

 

ハナブロテーマ「精子と卵子」

 

 

文責:

[研究開発部門]

長谷川 昭子

医学博士、兵庫医科大学非常勤講師、日本受精着床学会評議員
[理事長] 塩谷 雅英

 

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