英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

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胚培養スタッフより

はなぶさコラムス

当院胚培養スタッフからお届けするコラムです。一般の治療ではなかなか見えにくい部分をお届けしています。

ZyMōt (ザイモート:膜構造を用いた生理学的精子選択術)について (2026年2月)

今回は当院にて導入している先進医療の1つであるZyMōtスパームセパレーターについてお話します。

 

ZyMōtは運動精子を回収するための新しいデバイスであり、顕微授精の精子を調整する場合に使用します。ZyMōtを使用することで、通常の精子調整よりも精子DNAへのダメージを低く抑えることができ、胚の発育、妊娠率が向上し流産率が低下するといったことが報告されています。

 

<精子調整と精子DNAへのダメージ>

体外受精を行う場合、精液をそのまま使用するのではなく、精液中の動いていない精子や不純物をある程度取り除き、運動性が良好な精子を集める精子調整が必要となります。

精子調整には、遠心分離を用いることが一般的であり、当院でも密度勾配遠心分離法(パーコール法などとも呼ばれています)を用いて精子調整を行っています。

しかし、遠心分離機で高速の回転をかけることで精子DNAにダメージが生じることや、物理的に精子の細胞が壊れることによって活性酸素が生じ、精子DNAに悪影響を与えてしまうことが分かってきました。

<精子DNAへのダメージが不妊治療に与える影響>

精子DNAがダメージを受けることは胚の発育に悪影響であり、さらに流産の原因になると考えられています。

多くの細胞はDNAのダメージを修復する機能を持っていますが、精子にはその機能がありません。もしもダメージを受けたDNAを持った精子と卵子が受精した場合には、卵子側のDNA修復機能によって胚の修復が起こるとされています。

しかし、胚の発育がうまくいかない方や習慣性流産の方では、この卵子側の修復機能そのものが低下している可能性があります。そのため、ダメージのないDNAを持った精子を選択することができれば、治療の成績が向上する可能性があります。

 

<ZyMōtを使用した精子調整>

ZyMōtは精液チャンバーと回収チャンバーが、精子より少し大きな孔が開いた膜によって仕切られている構造をしています。その膜を泳いで通り抜けることができた運動性の良い精子のみを回収します。膜を通過できない奇形精子や運動性の低い精子、精液中の余分な細胞などは回収されません。遠心分離を行わないため、精子DNAへのダメージを低く抑えることができます。

<ZyMōtのデメリット>

ZyMōtでは、自分の力で泳ぎあがってきた運動精子を回収するため、高度乏精子症(精子の数が少ない場合)や精子無力症(精子の運動性が低い場合)の方には使用できない場合があります。また、現在先進医療として用いることができるのは顕微授精のみが対象となっているため、体外受精(cIVF)を希望されている方には使用することができません。

 

精子の状態や受精方法によって対象の患者様が限られてしまうというデメリットはありますが、なかなか胚の発育がうまくいかない方や習慣性流産で悩まれている方は、ZyMōtの使用を考えてみてはいかがでしょうか?ご希望の方は診察で医師にご相談ください。

 

コラムを通じて、ご不安のない状態で治療に進んでいただくための手助けができれば幸いです。今後も新たな知識や技術を取り入れながら、常に最善の医療を提供できるよう日々努力してまいります。

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