英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

胚培養スタッフより

はなぶさコラムス

当院胚培養スタッフからお届けするコラムです。一般の治療ではなかなか見えにくい部分をお届けしています。

SEET法について(2009年12月)

~SEET法について~

自然の妊娠では、受精卵(胚)は卵管の中で受精し、分裂増殖しながら移動し、胚盤胞となる頃に子宮の中に到着します。近年、卵管の中を移動中の胚が子宮内膜に信号を送り、着床に向けて準備を始めることがわかって来ました。
この概念に基づき、考案した方法が二段階胚移植です。その後、特に反復ART不成功例に対する移植法として良好な成績が得られていますが、二段階胚移植は少なくとも2個移植するため多胎を回避できません。
現在では多胎防止のため主に単一胚移植が行われており、初期胚移植か胚盤胞移植のいずれかを行うことになります。初期胚移植は、自然の妊娠ではまだ卵管のなかにあるはずの胚を子宮の中に戻しますので、妊娠率に限界があります。胚盤胞移植では、胚を200~400細胞の胚盤胞と呼ばれるようになるまで培養液の中で育てから子宮内に戻すため、妊娠率は向上しますが、二段階胚移植のような胚と子宮内膜の相互作用を期待できません。
当院不妊センター所長の後藤栄(ごとうさかえ)医師が新たに考案した方法が、子宮内膜刺激胚移植法Stimulation of Endometrium-Embryo Transfer ; SEETです。
近年、培養液上清に胚から分泌された子宮内膜の着床を促進する物質が存在することが報告されています。SEETは胚盤胞を移植する前に、胚培養液を子宮内に注入することにより信号を送り子宮内膜の準備を始めることで、着床しやすい環境にしてゆくことを期待する方法です。

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~当院におけるSEET法の胚移植成績について~
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図1の検討対象は、採卵周期において4個以上の胚が得られ、二段階胚移植または胚盤胞移植を行い、かつ、余剰胚として凍結保存できる胚盤胞も得られたが、妊娠・出産に至らなかった症例としました。2005年1月から2006年9月までにホルモン補充周期において、SEET療法と融解胚盤胞移植を行った23周期(SEET群)と融解胚盤胞移植のみを行った25周期(BT群)の、『胚移植周期あたりの臨床妊娠率*』を示しています。(*子宮内に胎嚢が確認できた場合に、臨床妊娠陽性としました。)
平均年齢は、SEET群が36.9歳、BT群が36.1歳、平均既往採卵回数は、SEET群が2.0回、BT群が2.0回でした。
臨床妊娠率は、SEET群が87.0%でありBT群の48.0%と比較して有意に高率となりました。

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図2では、初回採卵周期に全胚凍結を行い凍結胚盤胞が得られた症例うち、研究への参加の同意が得られた144例を、無作為に下記の3群に分けて前方視的に検討を行った結果を示しています。検討期間は、2006年5月〜2007年12月です。
1. SEET療法施行後、胚盤胞を移植(SEET群)
2. 未使用の培養液を子宮内へ注入後、胚盤胞を移植(ST群)。
3. 胚盤胞のみを移植(BT群)
Gardnerの分類により、grade3 AA, 4, 5, 6の胚盤胞を“High-grade胚盤胞”、その他の胚盤胞を“low-grade胚盤胞”としました。いずれもホルモン補充周期において融解胚盤胞移植を1個移植し、『胚移植周期あたりの臨床妊娠率*』を示しました。(*子宮内に胎嚢が確認できた場合に、臨床妊娠陽性としました。)
平均年齢は、“High-grade胚盤胞”を移植した場合のSEET群が32.7歳、ST群が33.6歳、BT群が34.0歳、“Low-grade胚盤胞”を移植した場合のSEET群が33.7歳、ST群が32.1歳、BT群が32.3歳でした。
High-grade胚盤胞を移植した症例での臨床妊娠率は、SEET群80.0%, ST群69.0%, BT群56.0%となり、SEET群はBT群より有意に高率となりました。

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図3は、2005年1月から2009年1月までに、SEET療法と融解胚盤胞移植(1個)を行った1669周期(SEET群)と、融解胚盤胞移植(1個)のみを行った914周期(BT群)について、採卵回数別に『胚移植周期あたりの臨床妊娠率』をまとめた結果です。
採卵回数に関わらず、SEET群の臨床妊娠率がBT群と比較して高率となる傾向がみられました。

~参考文献~
Goto S, Kadowaki T, Hashimoto H, Kokeguchi S, Shiotani M.
Stimulation of endometrium embryo transfer can improve implantation and pregnancy rates for patients undergoing assisted reproductive technology for the first time with a high-grade blastocyst.
Fertil Steril. 2009 Oct;92(4):1264-8. Epub 2008 Oct 17.

Goto S, Kadowaki T, Hashimoto H, Kokeguchi S, Shiotani M.
Stimulation of endometrium embryo transfer (SEET): injection of embryo culture supernatant into the uterine cavity before blastocyst transfer can improve implantation and pregnancy rates.
Fertil Steril. 2007 Nov;88(5):1339-43. Epub 2007 Jun 7.

英ウィメンズクリニック
胚培養部門 サブリーダー 泉陽子

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