不妊治療の知識

8月のおはな

顕微授精による治療

顕微授精による治療について

精子が極端に少なく、体外受精を行っても受精卵が得られないことがあります。精子の数や運動が正常でもやはり受精卵が得られないことがあります。このような場合でも、顕微鏡下に細い針を使って精子を卵子の中に注入することで受精が成立することが知られています。これを、顕微授精といいます。
この方法により、従来の体外受精・胚移植法では妊娠できなかった御夫婦にも妊娠が成立するようになりました。平成12年度の集計では平成10年の1年間に日本で3701人の赤ちゃんが顕微授精により誕生しています。当院でも、この治療を実施し、すでに多数(県内随一)の妊娠例を得ております。また、当院では、無精子症の患者様においても、精巣精子を用いた顕微授精治療を実施することで多数(やはり県内随一)の患者様において良好な成績を得ております。

顕微授精でも受精が起こらない場合には

顕微授精治療を行っても受精を得ることが出来ない場合には、顕微授精治療後の卵に電気刺激を加える補助受精などの方法があります。

ギフト法(GIFT)及びジフト法(ZIFT)
子宮鏡を用いるギフト法(GIFT)及びジフト法(ZIFT)
腹腔鏡を用いるギフト法(GIFT)及びジフト法(ZIFT)

受精する前の精子と卵子を卵管の中に移植する方法をギフト法(GIFT)といい、受精卵を卵管の中に移植する方法をジフト法(ZIFT)といいます。ギフト法(GIFT)では、体外受精法と同じように排卵誘発や採卵を行って得られた卵子を、精子とともに細いチューブで卵管の中に移植します。通常片方の卵管に卵子を2個ずつ移植します。ジフト法(ZIFT)では、体外受精法と同じようにして得られた受精卵を、やはり、卵管の中に移植します。卵管の中にカテーテルを挿入する方法として、子宮鏡を用いる方法と腹腔鏡を用いる方法があります。子宮鏡を用いる方法の場合、痛みを伴わず、短時間で終了し、麻酔を必要としません。腹腔鏡を用いる場合には、麻酔を行い腹腔鏡をお腹に挿入して移植を行います。この場合、所用時間は2時間、手術後は数時間の安静を要します。
ギフト法やジフト法の妊娠率は体外受精法よりもやや高くなります。4~8細胞期の受精卵にとっては、子宮の中よりも卵管の中の方が居心地が良いからです。子宮鏡を用いる方法での妊娠率はおよそ30%、腹腔鏡を用いる方法の妊娠率はおよそ50%と腹腔鏡を用いる方法の方が妊娠率が高まります。しかし、腹腔鏡を使う為お腹に小切開を必要とします。ただし、小さい傷ですから痕はあまり気になりません。
当院の2段階胚移植法の妊娠率はギフト法やジフト法の妊娠率を越えるようになり、最近はギフト法やジフト法をお勧めするケースは大変少なくなっています。

受精卵の凍結保存、融解胚移植

排卵誘発剤を使いますので、受精卵が沢山できるのが普通です。移植する受精卵は、通常1個とし、余った受精卵は凍結保存しておけば、将来の治療に備えることが出来ます。当院では、皆様に凍結保存をお勧めしております。凍結しておいた受精卵は、別の周期に、融解・移植出来ます。当院では、採卵後2日目で4~8細胞期となった受精卵および採卵後5日目に胚盤胞となったところでの凍結も行います。凍結保存胚での妊娠率は、40%〜70%前後に達しております。一度の採卵で複数個の受精卵を育て、新鮮胚移植、凍結胚移植とチャンスを増やしていくと、妊娠にいたるまでの採卵回数を減らすことができます。当院では採卵回数をできるだけ少なく妊娠できるようにと考えております。

精子の凍結保存

採卵や人工授精の日にどうしてもご主人が来院出来ない場合、予め精子を凍結して保存する事が出来ます。又、普段の精液検査にて結果が不安定な患者様におかれましては、良好時の精液を凍結保存しておくことで、より良い結果を期待することが可能となります。

補助孵化療法

受精卵は透明帯という蛋白でできた殻に包まれています。この透明帯が厚く硬いため孵化できず、その結果着床しにくい場合があります。このような場合には移植する前に透明帯を削っておくことで孵化しやすくすることが出来ます。これを補助孵化療法といいます。当院では、補助孵化療法として、

  • 酸性タイロードによるマイクロ法
  • 酸性タイロードによる全周法
  • 胚盤胞透明帯除去法
  • レーザー光照射によるレーザー法

を行っております。この4種類の方法の内どれが適しているかについては、受精卵の状態によって異なります。レーザー光照射によるレーザー法は、薬品を使用しない為受精卵への悪影響がほぼ皆無となりますので、皆さんにお勧めしたい方法です。胚盤胞期胚で透明体が薄くなっている場合には、酸性タイロードによる全周法か蛋白分解酵素による全周法をお勧めしております。

胚盤胞移植

体外受精による治療がなかなか妊娠に結びつかない時に考える方法として、胚盤胞移植があげられます。一般的な体外受精では、採卵後2日目の4~8細胞期に胚移植を行いますが、この方法では妊娠に至らない場合、受精卵をさらに3日間培養し、5日目の胚盤胞となるまで体外で発育させてから子宮内に移植します。

当院の標準治療は
まず、初期胚1個移植、これで妊娠できないときには当院が発案したSEET(シート)療法を

SEET(シート)療法につきましてはこちらにて詳しく説明しておりますので、ご参照ください。

2段階胚移植(治療がうまくいかないときに考えます)

2段階胚移植の詳細についてはこちらに詳しく説明していますのでご参照ください。
2段階胚移植は一般的な体外受精と胚盤胞移植を組み合わせた方法です。すなわち、採卵後2日目に、まず4~8細胞期の受精卵を1~2個胚移植を行い、残りの受精卵はさらに培養し(一部は凍結保存)、5日目に胚盤胞となったところで1個の胚盤胞を子宮内に移植します。このように胚移植を2段階にわけて行います。反復して治療が不成功に終わる場合にはお勧めしたい治療です。この方法が突破口を開くことが期待出来るからです。

安全な麻酔で痛みの無い採卵

採卵時の麻酔は、NLA変法あるいはプロポフォールの静脈内投与にて実施しております。具体的には、点滴を行いながら麻酔薬を静脈内投与します。点滴の際に少し痛みがありますがその後は痛みがありません。採卵中は睡眠状態になり、目が覚める時には静養ベッドに移動している状態になりますので、採卵中も苦痛を伴いません。静脈麻酔では不十分の場合には酸素と笑気の吸入麻酔を併用することもあります。いずれにしましても安全でかつ苦痛を伴わない麻酔を実現しております。麻酔の影響は半時間から数時間で消失しますので、朝に採卵を行った場合、お昼前には帰宅して頂けます。発育卵胞が1~3個くらいと少ない場合には点滴や麻酔を行わないで痛み止めの座薬だけで採卵を行う方がむしろ楽になる場合があります。