不妊治療の知識

1月のおはな

解説コーナー

(1)自然排卵を抑えるGnRHアナログとは?(イトレリン、フセット、スプレキュアーなど)

GnRHはゴナドトロピンリリーシングホルモンと読みます。これは脳の視床下部から分泌されるホルモンで脳下垂体に作用し、性腺刺激ホルモンの分泌を促進 します。アナログとは類似物質という意味です。さて、点鼻法や皮下注射法によりこのGnRHアナログを体内に投与すると、脳下垂体に作用して一時的に性腺 刺激ホルモン(FSHandLH)の分泌が促進されます。これをフレアーアップと呼びます。しかしその後は性腺刺激ホルモンの分泌が抑制され、ひいては自然排卵も抑制されます。

(2)移植する胚の数について

何個の胚を移植するか頭を悩ませることがあります。妊娠できそうな胚がたくさん発育したときです。たくさんの胚を移植した方が高い妊娠率を期待できるでしょう。しかし、多胎妊娠を招く可能性も高まってしまいます。当院では、移植胚の数は原則として2個と考えています。妊娠・分娩の大変さや、育児の大変さを考えると、双子、3つ子の妊娠はなるべく避けたいと考えております。したがって、胚移植の数は、胚移植当日に妊娠できそうな胚の数を確認してから、改め てご相談致しますが、当院では、標準治療として2段階胚移植を実施しておりますので、1段階目の胚移植では1個の受精卵(4~8細胞期)を、2段階目の胚 移植では1個の受精卵(胚盤胞期)を移植します。たとえ、妊娠出来そうな胚がたくさん発育しても、移植する胚を制限すれば、三つ子妊娠を避けることが出来 ます。残った胚は、凍結して保存しておくことが出来ます。ちなみに当院では、2段階胚移植にて合計3個の良好受精卵を移植した場合、妊娠率は65%前後と なりますが、そのうち双胎が40%、三つ子が5%となります。2段階胚移植にて合計2個(1段階で1個、2段階で1個)にしておきますと、妊娠率は62% 前後とわずかに低下しますが、双胎が20%、三つ子が0%という結果です。

症例コーナー(当院のカルテから)

39才、不妊期間は5年。妊娠歴なし。子宮卵管造影では特に異常なし。夫に乏精子症を認める。人工授精を5回行ったが妊娠に至らず。男性因子によ る不妊の 為、顕微授精による治療を実施。ロングプロトコールにて排卵誘発を行ったところ、右の卵巣に5個、左の卵巣に2個、合計7個の卵胞の発育を認めた。排卵誘 発剤投与開始から10日目に採卵を行ったところ5個の卵を採取できた。同日、顕微授精を実施したところ、翌朝、4個の卵に受精を確認した。さらに培養を続 けたところ、翌日、4細胞期胚4個の発育を確認した。同日(採卵後2日目)4細胞期胚1個を第1段階目の移植として子宮腔内に移植した。残りの4細胞期胚 2個は培養液を胚盤胞用のものに移し変え、さらに3日間培養。採卵後5日目の観察にてグレード4の胚盤胞の発育を2個認めた。このうち1個の胚盤胞を第2段階移植として子宮内に移植。残った胚盤胞1個は凍結保存した。黄体補充療法とし ては、毎日、天然型プロゲステロンの筋肉投与を実施、2段階目の胚移植後10日目の外来受診時、血液検査にて妊娠を確認。さらに、1週間後の受診日には超 音波で子宮内に胎嚢を確認出来た。

先天異常について

平成6年に我が国で出生した体外受精児1339人中、先天異常や染色体異常が見つかったのは7人(0.5%)です。この値は通常妊娠と変わらず、体外受精・胚移植法を行ったことにより先天異常率が高くなるということはありません。

流産について

日本産婦人科学会によれば、流産は妊娠例のおよそ20%に起こります。当院では、黄体補充療法を工夫し、また、受精卵の培養環境を改善するなどの工夫により、流産率は15%前後と全国平均よりも低くすることが出来ております。