不妊治療の知識
排卵が起こった後、卵巣に形成される黄体から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されます。
受精卵が子宮内腔に着床するためには、必要な濃度の黄体ホルモン(10ng/ml以上)が、充分な期間(11日以上)にわたり分泌される必要があります。
この黄体ホルモンが不充分であるときには着床が起こりにくくなり、不妊症となります。この状態を黄体機能不全といいます。
飲み薬の黄体ホルモン製剤や、黄体ホルモンそのものを筋肉注射で補う方法と、HCG製剤を投与して、卵巣の黄体を刺激し、黄体からの黄体ホルモンの分泌を促進する方法などがあります。
黄体ホルモン製剤には、内服薬、座薬の2通りがあります。
排卵期になると、子宮頚管粘液は透明になり、粘稠性を増し、精子の侵入を助けるように劇的に変化します。この変化が不充分であれば、膣内に射精された精子は子宮の中へ進むことができません。その結果、不妊症となります。
このような場合、子宮内腔の奥へ精子を直接注入する、人工授精(AIH)が有効です。
排卵期の頚管粘液の変化は、エストロゲンにより促進されるものですから、エストロゲン製剤による治療が試みられることもあります。
抗精子抗体は、精子にくっついて精子の運動を妨げたり受精を起こらなくさせる抗体です。
女性の体内にこの抗体が見つかる場合は、自然妊娠は起こりにくいため、体外受精による治療が有効です。ステロイドホルモンの内服治療で抗体の減少をはかる治療が試みられることもあります。