研究開発・学会発表

【目的】

移植前の胚盤胞に対し、レーザー光照射による透明帯開孔を行うことで、治療成績が改善したという報告は少なく無い。一方、開孔方法その後の胚に及ぼす影響について詳細な検討を行っている報告は少ない。そこで、本研究では2種の開孔方法が、孵化するまでの胚にどのように影響するかについて検討した。

【方法】

研究への使用に対して、同意を得られた廃棄予定の凍結胚盤胞を用いて検討を行った。開孔を行わなかった群を対照群（n=42）とし、透明帯全体の1/4を扇形に開孔した群（扇形群、n=44）、同じく1/4を直線的に開孔した群(直線群, n=41)を透明帯開孔群とした。それぞれの胚は開孔した後、Time-lapseによる経時的観察を行った。検討項目は、融解後拡張胚盤胞になってから孵化開始まで(検討1)、と再拡張から孵化終了までの時間(検討2)とした。また、再拡張してから孵化終了までの収縮回数、及び完全孵化率について、それぞれを比較検討した。

【結果】

検討1に要した平均時間は、対照群、扇形群、直線群で、18.5±9.4h、0.4±1.4h、0.3±0.5hであり、対照群に比べて扇形群、直線群では有意に短かった（P＜0.01）。検討2では、26.2±10.1h、12.5±7.3h、10.9±7.2hで、扇形群、直線群が対照群より有意に短かった（P＜0.01）。また両検討において、開孔群間に差は認められなかった。収縮の平均回数は、それぞれ1.3±1.0回、0.7±1.0回、0.5±0.7回で、完全孵化率は、45.2％、93.2％、100％であった。

【考察】

開孔方法に関わらず、レーザー光照射による透明帯の開孔は、胚盤胞の孵化促進において有効であることが示された。また開孔群間に差はなかったことから、融解後の胚の状態に応じた方法を採択することが可能と思われる。