診療・治療
今年2015年は国際光年で、青色LED発明に対する3氏のノーベル賞受賞も昨年あり、光や照明に注目が高まっている。この低出力レーザー治療(LLLT)も最後のLは光を表すとので光治療である。そしてLLLTの科学的な根拠は40年以上に渡り、ヨーロッパを中心に100件以上の二重盲検法による効果報告がなされ、2500以上もの臨床研究が医学分野でなされ効果を検証されている。歯科分野、スポーツ分野、獣医分野でも重要かつ欠かせない治療法となっている。生殖医療、特にARTでの治療に生かせる補助治療方法としてのエビデンスを構築目的で、当院のこれまでの臨床検討と新しい取り組みの報告する。今回は下記の3項目を中心とした。
①移植前SEET(子宮内膜刺激方法)にLLLT併用の効果
当院では以前よりSEET(stimulation endometrium of embryo transfer)へのLLLT併用の着床率、継続妊娠率などを報告している(第8回神戸での本会)今回は症例数を増やしてその結果を報告する。LLLT併用SEET252例、SEETのみ233例で妊娠継続率はそれぞれ37.7%、33.5%であった。二回以上移植を受けている方を同様に二群にわけておこなうとLLLT併用例が有意に妊娠継続率が高かった(41.3%vs33.0%)。症例数を増やしLLLTが着床に好影響の再確認ができた。次にLLLT併用でイソフラボン(アグリマックス®)を加えることの検討もおこなった。LLLTは子宮内膜NK細胞への制御効果を発揮するといわれ、またアグリマックス®はそのNK細胞を介して内膜への着床必須物質であるLIF(leukemia inhibitory factor)産生へ関与している。実際に35例で検討をしたところ、良好胚盤胞に限ると有意にLLLT+アグリマックス内服症例に妊娠率が高くなった(前方視的検討)。
②鍼の代用としてLLLT使用経穴への照射後採卵時その他経腟手術の疼痛緩和への検討
鍼により採卵時の疼痛緩和の報告がある。今大会長の原先生も一源三岐鍼理論で疼痛緩和ができると発表された(第9回本学会)。2014年の日本レーザー治療学会でも経穴にLLLTを照射して動物で疼痛緩和ができる発表もあった。そこで当院での採卵症例(局所麻酔に限る)に対して採卵前に経穴(水溝、三陰交、開口、合谷)に各左右1分間毎に照射しVASスケール(1-10)でのアンケート回収にて効果を調べた。結果はLLLT照射していない群と比較して有意に疼痛緩和ができた。また術後の痛みVASスケールの6-10あたりの減少をみている。採卵時3回以上の穿刺に限っても有意に疼痛緩和ができることがわかった。また、加えて子宮内膜ポリープ除去への子宮内膜掻爬術とFT(卵管鏡下卵管形成術)についても術前に同様の経穴にLLLTを照射することでの有用性についても合わせて報告する。
③男性不妊の患者への睾丸へのLLLT照射
男性不妊へのLLLTの応用についてはvitroの実験で精子に直接照射することで運動率の上昇が期待されると第7回京都本学会において会長田村先生が報告された。臨床検討として、直接睾丸に照射した例は少ないが有効であるという文献(1989)がある。それ以降のこの項目に追試がないのが現状であり、当院で追試を試みた。乏精子症9例にLLLTの照射を同意後、保護用メガネ付け、週一回で3-4回以上を実施した。精子所見の変動を追えることができた5/7例は精子所見の改善し、そのうち1例は自然妊娠にいたった。
時間があれば、あわせてその他のLLLT利用についても報告したい。