英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

研究開発・学会発表

診療・治療

第12回 日本不妊カウンセリング学会

  • 当院における自己注射教室での指導の改善・実施率の向上を目指して
    ~自己注射教室のアンケートを通じて~
  • 平成25年5月31日(金) ニッショーホール(東京都港区)
  • 第12回 日本不妊カウンセリング学会
  • 信川洋子、武田久美、藤井美喜、松浦操、柿田志津子、苔口昭次、塩谷雅英


    英ウィメンズクリニック

【目的】
生殖補助医療においては、自然周期に発育した卵胞から採卵する場合もあるが、一般的には多数の卵胞を発育させるため調節卵巣刺激法を行った後に採卵することが多い。刺激法では連日の注射薬の投与が必要になり、そのため通院に伴う時間や精神的、そして経済的負担が大きい。ペンタイプの使用により緩和できる面も多いが、使用できる薬剤が限られる。そのため、当院では自己注射教室を開催して自己注射を指導し、安全に実施が可能となった患者には自己注射を勧めている。しかし、教室に参加しても自己注射できない患者も少なくない。そこで今回、自己注射をより安全に不安なく実施できるような指導方法の開発を目的として、本研究を開始した。

【方法】
2012年7月1日より8月9日の間に当院の自己注射教室合計8回に参加した患者94名にアンケートを配布し、教室開催後に回収をした。研究発表等で使用することを明記し、個人の情報の漏洩はしないという条件で記名とした。有効回答を得られたのは88名、有効回答率93.6%であった。患者の平均年齢35.8歳、自己注射教室1回あたりの平均受講者数は11.9名であった。自己注射教室では皮下注射DVD(当院作成用)を流し、講義に入る。内容は注射薬剤の説明、手技の説明、手技の実施を行っている。

【結果】
「自己注射をはじめようとしたきっかけ」は「通院回数を減らしたい」が69名(78.4%)であった。その理由として、「仕事があり毎日の通院はできない」が46名(52.3%)、ついで、「自宅や勤務地が遠方の為通いづらい」と29名(33.0%)が答えた。少数であるが、「医師から勧められたから」、「皮下注射を希望したい」とのことで受講したという回答もあった。実際の治療にあたっては、初回の自己注射の際に手技見守りを22名に実施した。見守りの結果は、皮下注射に必要な項目を16項目に分け、それぞれの項目を「声掛けなしで実施できる」、「声をかければできる」、「できない」、の3段階で評価した。声をかければできる項目として多かったものは、「清潔操作が出来る」、「生理食塩水を適切な量に調整することができる」、「薬を溶くことができる」、「針を付け替えることができる」、「空気抜きができる」であった。その他の項目は、殆ど全員が声をかけなくても実施ができていた。
自己注射に対する思いについては、9項目の質問を設定し、「かなりそう思う」、「そう思う」、「少し思う」「思わない」、の4段階の回答を用意した。「清潔操作が出来るか不安ですか」との質問には「かなりそう思う」が7名(8.0%)、「そう思う」が27名(30.7%)、「少し思う」が47名(53.4%)、「思わない」が7名(8.0%)となった。「手技に間違いがないか不安ですか」の質問には「かなりそう思う」が20名(22.7%)、「そう思う」が27名(30.7%)、「少し思う」が36名(40.9%)であった。「痛みが強くないか不安ですか」との質問では「かなりそう思う」が23名(26.1%)、「そう思う」が28名(31.8%)、「少し思う」が30名(34.1%)、「思わない」が7名(8.0%)であった。「効果がきちんと出るか不安ですか」との質問には「かなりそう思う」が12名(13.6%)、「そう思う」が27名(30.7%)、「少し思う」が33名(37.5%)、「思わない」が16名(18.2%)であった。「毎日注射をすることがストレスになりますか」に対しては、「かなりそう思う」が20名(22.7%)、「そう思う」が23名(26.1%)、「少し思う」が32名(36.4%)、「思わない」が13名(14.8%)であった。教室の最初に流しているDVDの使用方法についは、「自宅で注射をする前に観たい」が18名(20.5%)、「教室後自分が実施する前に観たい」が42名(47.7%)、「注射内容が変わるときに観たい」と答えた方が10名(11.4%)、「特に観なくてもよいが4名」(4.5%)、「本日は観ていないが機会があれば観たい」が11名(12.5%)、「本日は観ていないが特に必要はない」が3名(3.4%)であった。

【考察】
自己注射実施についての不安では、清潔操作についての不安が多項目の不安に比べ少なかったが、実際に手技のチェックをすると清潔操作を声掛けなく実施できたのは22名のうち13名(59.1%)であった。実際は清潔操作を実施できていないのに不安に感じる患者が少ない結果が出たのは、医療従事者と「不潔」「清潔」に対する認識の相違に基づくものと考えられた。今後は、清潔操作のついての指導方法の改善が重要と考えられた。
手技に関しては不安に感じる患者が多く、生理食塩水の調整、針の付け替え、空気抜きに関しては、初回自己注射の見守りにおいて声掛けが必要であることがわかった。今後これらを重点的に指導することが重要であることがわかった。痛みも不安に思う項目として回答が多かった。今後、ペンタイプが普及することで緩和される可能性がある。毎日の注射をストレスに感じているという回答が多くみられた。労いの声掛けが重要であると考えられた。
今回の研究結果から、自己注射を実施することで通院が減り、生活リズムを保てそうだと感じている患者が少なくなく、自己注射は患者の負担軽減に役立っていることがわかった。また、自己注射教室を受講することでその手技を取得することだけではなく、使用する薬剤についての知識を深めることができることが分かった。しかし、自己注射を実施することができるのは教室を受講した患者様全てではないのが現状である。前年度では受講しながらも実施しないと選択をされた方が15.1%おり、実施率は79.7%となっている。今回の実施者の中でも実施できていない患者もあり、今後は、自己注射実施率の向上を図っていきたいと考えている。

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