診療・治療
【発表の概要】
【目的】
Low Level Laser Therapy (LLLT)は、細胞を活性化させ、血液循環や新陳代謝を促進させることから、卵巣機能ならびに子宮(内膜)の着床能向上などの効果が期待されている。そこで我々はLLLTを胚移植前に実施することで妊娠率が向上するかどうか検討した。
【方法】
検討1.では、2011年12月~2013年3月に凍結胚移植を実施した症例のうち研究の参加に同意を得られた59例を無作為に2群にわけ、33例には胚移植当日にLLLTを実施(当日LLLT(+)群)、他の26例にはLLLTを実施せず通常通りに移植を行った(当日LLLT(−)群)。LLLTの照射は子宮近傍に1分間行った。
検討2.では同期間に凍結胚移植を行う前に同意を得られた259例を2群にわけ、149例には移植3日前にLLLTを実施し(3日前LLLT(+)群)、110例にはLLLTを実施せず移植を行った(3日前LLLT(−)群)。検討項目は化学妊娠率、臨床妊娠率、着床率および継続妊娠率とした。LLLTの照射は左右星状神経節に2分間ずつ、ならびに臍上部,子宮近傍および左右卵巣近傍に4分間行った。2群間の統計学的解析にはχ二乗検定を用いた。
【結果】
検討1.では、当日LLLT(+)群と当日LLLT(−)群の化学・臨床妊娠率には有意差はなかったが、(+)群で高い傾向があった(図1)。検討2.では、3日前LLLT(+)群と3日前LLLT(−)群の着床率、臨床妊娠率には有意な差はなかったが、3日前LLLT(+)群にて高い傾向があり、継続妊娠率は3日前LLLT(+)群が57.7%、3日前LLLT(−)群38.8%と比較し有意に高率であった(p=0.017)(図2)。
【考察】
LLLTが卵巣機能あるいは子宮着床能に及ぼす影響についての報告は少ない。今回、凍結胚移植においてLLLTを併用することでその治療成績が向上する可能性が示唆された。その効果は、移植当日にLLLTを実施することでもある程度期待できるが、移植3日前に実施することでより効果が高まる事が示唆された。この効果がLLLTによる血流改善等を介するものか、子宮(内膜)への直接効果なのかは不明である。今後その作用機序についても検討して行きたいと考えている。