研究開発・学会発表

9月のおはな

第26回 日本受精着床学会総会・学術講演会

学会名

第26回 日本受精着床学会総会・学術講演会

日・場所

平成20年8月28日~29日 福岡国際会議場

タイトル

子宮内膜刺激胚移植法:Stimulation of Endometrium -Embryo Transfer; SEET の成績

発表者名

後 藤栄
英ウィメンズクリニック

【発表の概要】

【はじめに】生殖補助医療における着床不全の一因として、胚因子の刺激に対する子宮内膜の反応異常に起因する胚受容能の異常が考えられている。近年、胚培養液上清 (ECS)には子宮内膜胚受容能促進に関与する胚由来因子が存在することが報告されている。そこで、ECSを子宮腔内に注入することにより子宮内膜が刺激を受け、胚受容に適した環境に修飾される可能性があると考え、胚盤胞移植(BT)に先立ちECSを子宮腔内に注入する方法を考案し、これを子宮内膜刺激胚移植法:Stimulation of Endometrium -Embryo Transfer; SEETと命名した。ワークショップでは、反復ART不成功例に対するSEETの成績(研究1)、ならびに初回ART症例に対するSEETの成績(研究 2:Randomized, controlled trial)について報告する。

研究1
【方法】過去にBTまたは二段階胚移植にて妊娠に至らず、ホルモン補充移植周期(HRT)に凍結融解胚盤胞を移植した48症例を対象とした。胚盤胞(BL)はHRT day20に1または2個移植した。採卵周期に患者自身の胚を受精後2~5日目まで培養したECSを-20℃で凍結保存しておき、同意を得てHRT day17に凍結保存していたECS 20μlを子宮腔に移植カテーテルを用いて注入後、day20にBLを移植した23例をSEET群とした。ECSを注入せず従来通りのBTをした25例を BT群とした。

【成績】SEET群とBT 群で、平均年齢、不妊期間、既往ART回数、平均受精卵数、平均移植胚数に有意差は認めなかった。臨床妊娠率および着床率(GS数/移植胚数)はそれぞれ、SEET群が87.0%(20/23)、71.9%(23/32)でありBT群の48.0%(12/25)、37.8%(14/37)と比較し有意に高率であった。

【結論】SEETは反復ART不成功例に対して、妊娠率および着床率を上昇させる新しい移植方法になるうることが示唆された(Fertil.Steril 2007)。

研究2
【方法】初回採卵周期に全胚凍結を行い凍結胚盤胞が得られ研究に同意した144例を対象とした。HRT融解胚移植周期に、胚盤胞移植するBT群48例、培養液 20μlをday17に子宮注入後day20にBLを移植するST群48例、ECS 20μlをday17に子宮注入後day20にBLを移植するSEET群48例の3群に無作為に分けた。妊娠成績は各群をさらに移植胚のグレード別(Gardner分類)に3AA未満の胚(low grade胚)と3AA以上の胚(high grade胚)のサブグループに分け6群で検討した。移植は1個とした。

【成績】平均年齢、不妊期間、平均受精卵数、基礎FSH値は各群で有意差はなかった。low grade胚移植例で着床率(day30にて血中hCG陽性率)および妊娠率はそれぞれ、BT群65.2%(15/23)、52.2%(12/23)、 ST群47.4%(9/19)、42.1%(8/19)、SEET群60.9%(14/23)、39.1%(9/23)で有意差はなかった。high grade胚移植例で着床率、妊娠率はそれぞれ、BT群64.0%(16/25)、56.0%(14/25)、ST群75.9%(22/29)、 69.0%(20/29)、SEET群92.0%(23/25)、80.0%(20/25)でSEET群はBT群より着床率および妊娠率が有意に高率だった。

【結論】初回ART症例で良好胚盤胞の移植例ではSEETはBTより妊娠成績が良いことが示された。

SEETは胚盤胞が1個あれば遂行可能な方法であり、多胎を予防し、かつ胚由来因子による子宮内膜の胚受容能の亢進を期待できる方法であるため、今後有用な移植法となりうると考えている。