研究開発・学会発表

4月のおはな

第45回 日本哺乳動物卵子学会

学会名

第45回 日本哺乳動物卵子学会

日・場所

平成16年5月16日 ピアザ淡海 県民交流センター(滋賀県大津市)

タイトル

着床率向上への工夫 -2段階胚移植を応用して-

発表者名

後藤 栄、北川 勝、塩谷 雅英
Sakae Goto, Masaru Kitagawa, Masahide Shiotani
英(はなぶさ)ウィメンズクリニック Hanabusa Women’s Clinic
野田 洋一 Yoichi Noda
滋賀医科大学産科婦人科教室 Shiga University of Medical Science

【発表の概要】

受精・分割をクリアした胚が高い確率で得られるようになった現在のARTにおいて、妊娠率の向上を妨げている主原因は移植後の低着床率であるといえる。着床率の向上をめざして様々な技術や工夫が試みられているが、2段階胚移植は胚による子宮内膜胚受容能の亢進の概念に基づき、着床率を向上させる目的で開発された方法である。2段階胚移植はday2に4個以上の胚を有する周期に適応され、受精後2日目(day2)に初期胚を移植し、引き続き5日目(day5)に胚盤胞を1個移植する方法で、われわれの研究グループではday2移植と比較して着床率および妊娠率が高くなることを報告してきた1)。
しかし、2段階胚移植を施行しても妊娠が不成功となる症例や、胚が3個以下しかなく2段階胚移植の従来の適応基準を満たさない症例が少なからず存在する。そこで、今回、これらの症例に対して当院が行っている2段階胚移植の工夫とその成績について報告する。

(1)少なくとも1回の2段階胚移植を含むART反復不成功例に対する2段階胚移植の工夫
当院では、ART回数が2回目までの周期に2段階胚移植を施行した場合、移植あたり妊娠率は54.5%(133/244)になるのに対し、3回目以降になると妊娠率は37.5%(9/24)に低下した。妊娠率の低下の一因として胚の孵化障害による着床障害が考えられるため、2回以上のART反復不成功
例に対して、2段階胚移植の2段階目の移植時にblastocystの透明帯を完全に除去し移植を施行した(Zona Free)。Zona
FreeはFong らの報告に従いプロテアーゼを使用した2)。その結果、妊娠率は45.5%(5/11)となり、Zona
Freeを使用しない周期より高い妊娠率となった。少なくとも1回の2段階胚移植を含む妊娠不成功例に対して、Blastocyst Zona
Freeを併用した2段階胚移植は有用である可能性が示唆された。

(2)獲得胚数が3個以下の症例に対する工夫
獲得胚数が少ない症例では、ART反復不成功例であっても移植時期はday2かday3で行うことが多く、blastocyst transferを選択することは少ない。症例によっては、in vivoの環境よりin vitroの環境が発生に適している胚が存在することも考えられ、また、胚と子宮内膜の同期性の観点からはblastocystでの移植がより適していると考えられるにもかかわらず、獲得胚数が少ない症例に対してblastocyst transferが適応されない主たる理由として、day5まで培養を継続することによる胚発生停止、変性などによる移植のキャンセルが起こりうるためと考えられる。一方、2段階胚移植の利点の一つとして、たとえ継続培養が失敗し、blastocystが得られない場合においてもday2に移植を行うため、移植そのものがキャンセルになることが回避できることである。これまで、2段階胚移植の適応基準はday2に4個以上の胚を有する周期としていたが、当院では、この適応基準を満たす周期は全移植周期の54.0%にしか達しなかった。そこで我々は、胚が2個または3個しか得られない周期に対して2段階胚移植を適応しその有用性を検討した。胚が2個ある周期のうち少なくとも形態良好胚を1個存在する周期では、妊娠率はday2移植群で20.0% (18/90)であるのに対し2段階胚移植群では33.3%(30/90)であった。胚が3個ある周期のうち少なくとも形態良好胚を1個存在する周期では、妊娠率はday2移植群で26.7%(12/45)であるのに対し2段階胚移植群では38.7%(29/76)であった(2段階胚移植群には2段階目の移植がキャンセルになった周期も含んでいる)。獲得胚数が3個以下の症例に対する2段階胚移植の有用性が示唆された。

1)Goto S, Takebayashi K, Shiotani M, Fujiwara M, Hirose M, Noda Y.
Effectiveness of 2-step (consecutive) embryo transfer. Comparison with
cleavage-stage transfer. J Reprod Med 2003; 48: 370-4.

2) Fong CY, Bongso A, Ng SC, Kumar J, Trounson A, Ratnam S. Blastocyst
transfer after enzymatic treatment of the zona pellucida: improving
in-vitro fertilization and understanding implantation. Hum Reprod. 1998
Oct;13(1O):2926-32.