研究開発・学会発表

11月のおはな

第29回 日本受精着床学会学術講演会

学会名

第29回 日本受精着床学会学術講演会

日・場所

平成23年9月9日 京王プラザホテル(東京都新宿区)

タイトル

着床と免疫 臨床応用できる知見は?

発表者名

英ウィメンズクリニック 塩谷雅英

生殖医療における進歩は著しいものがありその治療成績も向上している。しかし、子宮内に移植した胚の着床率は決して満足のいくものではない。良好胚を移植しても反復して着床しない症例に遭遇することもある。これら着床不成功の多くは原因が不明であり、着床不成功例に対して有効な方策を講じる事が困難である場合が多い。ヒトを含めた哺乳類における胚の着床機序の全容がいまだブラックボックスの中にあることがその理由の一つである。
一方、近年、胚の着床機序の分子生物学的解析も著しく進歩し多くの知見が得られており、着床過程には様々な因子が複雑に関与していることがわかってきている。着床成立・維持過程における免疫因子の役割についての報告も少なく無い。子宮内膜には月経周期に応じて多くの免疫細胞やサイトカイン発現の消長が見られることが報告されている。
また、免疫細胞の分布異常が着床不全や習慣流産の病態と密接に関与しているという報告もある。サイトカインは免疫システムが正常な機能を果たす上で欠く事のできない因子であり、複数のサイトカインがヒト子宮内膜でも産生され、ヒト胚着床過程おいて重要な役割を演じていることも明らかとなりつつある(Makrigiannakis,2006)。

このように免疫系は着床の制御に重要な役割を演じていることが明らかとなりつつある。これらの報告に基づき、何らかの方法で着床を促進するような免疫系の調節を図ることができれば、胚着床率の向上や、反復着床不成功例の治療につながる可能性がある。実際に免疫系を調節することで胚着床率が向上したとする報告もある。Würfelらは胚を移植をする前に子宮内にG-CSF注入を注入することが有効であったと報告した(Würfel,2010)。Zhouらは子宮内膜に機械的傷を付けることで子宮内膜生検によって炎症反応が惹起され、その後の着床期の子宮内膜にマクロファージや樹状細胞が集積し、これに伴ってサイトカイン発現の上昇が見られ、結果的に胚着床率の向上が得られたとしている(Zhou2008)。
Yoshiokaらは自己末梢血単核球(PBMC)を子宮内に注入し免疫系を賦活化することが原因不明着床不全患者に有効であったと報告している(Yoshioka, 2006)。本講演では、胚着床成立・維持過程における免疫系の役割についてヒトを含めた各種の哺乳動物で明らかとなりつつある知見について概説し、生殖医療における胚着床率の向上および着床不全患者の治療における免疫系調節の臨床応用への可能性について述べる。