研究開発・学会発表

10月のおはな

第17回 日本不妊カウンセリング学会

学会名

第17回 日本不妊カウンセリング学会

日・場所

2018年6月1日(金) ニッショーホール

タイトル

第2子を希望し、不妊治療を受ける患者の1年後の経過について

発表者名

〇藤井美喜 オンビルギン操 苔口昭次 塩谷雅英

【目的】

2015年国立社会保障・人口問題研究所による「出生動向基本調査」1)によると、夫婦が希望する理想の子供の数は2.32人であり、2人目以上希望は9割以上とされている。不妊患者において第2子を希望する患者は多い。高田ら2)によると第1子をARTで妊娠した患者であっても第2子を得られる可能性が年齢が上がる毎に低くなり、40歳までに妊娠しないと第2子を得るのは難しくなるとされている。家族設計として第2子を希望するなら早めに検査治療を開始する方がよい。そこで、受診後1年以内に妊娠に至った例と至らなかった例を比較し、どのような例が妊娠に至ったのかを明確にすることで今後の治療の計画の参考とするのを目的とする。

【方法】

方法は、2015年7月から2016年1月に当クリニックに第2子希望で受診した不妊患者を対象に初診時問診票を確認する際にアンケートを配布し、回収ボックスにて留め置き法で325例から回答を得た(回収率81.5%)。
アンケートは、1)第1子の妊娠に至るまでの時期や状況、2)第2子不妊治療開始までの時期や状況で構成した。アンケート内に個人を特定しない状態で学会発表に使用することを明記した。アンケートの回収をもって研究同意とみなすことを説明した。そして、アンケートを回収できた325例の不妊患者の受診後1年後の不妊治療後の治療成績を検討した。

【結果】

対象の概要は、患者の年齢は平均36.5歳(±3.9歳)、第1子の子供の年齢は平均2.3歳(±
1.9歳)、1歳未満45例(13.8%)、1歳以上~3歳未満100例(61.5%)、3歳以上~5歳未満
54例(16.6%)、5歳以上26例(8.0%)であった。第1子の時の不妊治療経験の有無は「あり」
が244例(75.1%)、「なし」が81例(24.9%)であった。1年間継続して不妊治療を受けた患
者の治療内容は、ART182例(75.5%)、タイミング治療36例(15.0%)、人工授精23例(9.5%)
であった。
当クリニックを受診した患者の1年後の経過は、「1年以内に妊娠し、産院に紹介した人」が131例(40.3%)、「1年以内に妊娠したが流産に至った人」が26例(8.6%)、「不妊治療したが妊娠に至らなかった人」が82例(25.2%)、「1年継続して受診されず・途中で受診が途絶えた人」が84例(25.8%)であった。
2人目の不妊治療の開始年齢は平均36.2(±3.9)歳であり、35歳~39歳106例(44.0%)が最も多くみられた。「1年以内に妊娠した人」(159例)と「1年以内に妊娠に至らなかった人」(82例)を比較検討してみた。すると、「1年以内に妊娠した人」の開始年齢は30~34歳55例(76.4%)、35~39歳66例(62.3%)、40歳以上32例(59.3%)であった。「1年以内に妊娠した人」のうち34歳以下に不妊治療を開始した例は61例(75.3%)、35歳以上に開始していた例は98例(59.7%)であった(P<0.05)。
「第1子をARTで治療をしていた人」(182例)のうち、「第2子受診時に凍結受精卵のある人」は143例(78.6%)であった。そのうち、「1年以内に移植し妊娠した人」(83例)の凍結受精卵は平均5.0個、「移植したが1年以内に妊娠に至らなかった人」(27例)の凍結受精卵は平均3.4個、「移植したが妊娠に至らず再ARTとなった人」(29例)の凍結受精卵は平均2.0個であった。

【考察】

2人不妊の原因として考えられているのが、年齢の上昇による卵の質の低下や精子活動力の低下、子宮卵管環境の変化、性交回数減少などによる夫婦関係の変化、育児や仕事のストレスなどが考えられる。その中で最も影響が多いのが加齢であると思われる。
今回の研究において、第2子希望で受診した不妊患者の約半数の人が1年以内に妊娠されていたが、残り半数の人は1年以内に妊娠に至らなかった・継続して不妊治療されていない状況であった。また、「1年以内に妊娠した人」の不妊治療開始年齢は30~34歳76.4%、35~39歳62.3%、40歳以上59.3%であり、年齢が若いほど1年以内に妊娠しやすい傾向であった。過去の文献においても、第1子をARTで妊娠した経産婦においても40歳まで妊娠しないと第2子を得るのが難しいとの研究があったが、今回の研究では「1年以内に妊娠した人」のうち、「34歳以下に不妊治療を開始した人」と「35歳以上に開始していた人」との有意差がみられたことから、35歳過ぎて不妊治療を開始すると妊娠しにくくなる。よって、早めに第2子の不妊治療を開始する方がよいと思われる。
第1子をARTで治療をし凍結受精卵のある人のうち、「1年以内に移植し妊娠した人」の凍結受精卵は平均5.0個、「移植したが1年以内に妊娠に至らなかった人」の凍結受精卵は平均3.4個、「移植したが妊娠に至らず再ARTとなった人」の凍結受精卵は平均2.0個であった。これより、受精卵の凍結は5個以上が望ましいと考える。年齢が上がると凍結できる個数も減少してくる、再ARTになれば第1子の時より卵巣の機能が低下してくると思われるため、早めに治療を開始するのが望ましい。
早めに不妊治療を考えている患者においても、第1子を育てながらの治療になることから、治療にかける活動や経済的負担など、子育てや治療の両立に悩まれる。今後、第2子を妊娠しやすい環境、たとえば子供の託児、金銭的なサポート、心理的なストレスを緩和するための育児サポートが大切であると考える。

<参考文献>
1) 「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」、 国立社会保障・人口問題研究所
2) 高田玲子他:「不妊治療における第2子希望者についての検討」、日本生殖医学会誌、57巻4号、p.210