診療・治療
【発表の概要】
【目的】
以前、我々は本学会誌(2007年)において、胚と共に子宮内に注入され超音波で確認される培養液中の気泡の位置を移植部位とし、その気泡位置から子宮底までの距離別に妊娠率を検討した結果、妊娠率に有意差は認めなかったものの、7mmの位置で妊娠率に高い傾向を認めることを報告した。この報告以降当院では子宮底からの距離が7mmになるように胚移植を行ってきたが、今回新たに症例数を追加し移植部位が妊娠率に与える影響を後方視的に検討した。
【方法】
2005年9月1日〜2010年12月31日において初回採卵で良好胚を1個移植した初期胚移植925周期と胚盤胞移植860周期の計1785周期を対象とした。気泡確認位置から子宮底までの距離を測定し、<3mm;A群、≧3mm <6mm; B群、≧6mm <9mm; C群、≧9mm <12mm; D群、≧12mm <15mm; E群、≧15mm; F群にわけて臨床妊娠率を検討した。
【結果】
初期胚移植は、A群16.7%(6/36)、B群26.1%(80/306)、C群22.5%(86/383)、D群27.6%(42/152)、E群31.0%(9/29)、F群10.5%(2/19)であった。胚盤胞移植はA群73.5%(25/34)、B群56.5%(139/246)、C群60.5%(231/382)、D群61.7%(92/149)、E群55.6%(20/36)、F群46.2%(6/13)であった。初期胚及び胚盤胞移植時における気泡確認位置別には妊娠率に差を認めなかった。
【考察】
胚移植部位と妊娠率の関係について妊娠率に差はみられないが、子宮底からの距離が15mm以上離れている位置での妊娠率は、初期胚及び胚盤胞移植、共に低い傾向がみられた。移植時には、子宮底からの距離が15mm以上離れない位置での移植を実施した方が、妊娠率が高率となる可能性が示唆された。