診療・治療
【背景】当院は不妊あるいは習慣(反復)流産などの既往があるカップルを対象に体外受精や顕微授精等の高度生殖医療(ART)を多数実施している。初診時年齢の高齢化や治療の長期化に伴い高齢妊娠での流産が多く、また妊娠10週頃までに分娩先施設に転院されるため、ほとんどが化学流産を含めた妊娠11週までの初期流産である。
【対象】2008年10月から2012年1月までに検査を実施した200件の内、培養不成功2件を除く198件をGバンド分染法にて分析した。
【結果】流産時の母体平均年齢は38.0歳。化学流産を含めた流産回数は1~8回。ART後の流産が72%を占めた。異数性異常が69.7%、構造異常が5.6%であり、異常率は75.3%となった。正常核型は女児が16.2%、男児が8.6%であった。常染色体trisomyでは、trisomy22が最も多く、次いで15、21、16番のtrisomyであった。35歳未満での異常率は51%であったが、35-39歳では74.4%、40歳以上では88.9%に上った。
【結語】流産原因の解明は挙児希望のカップルと医師にとって今後の治療方針決定に有用な情報であるだけでなく、女性の自責感情を軽減する効果がある。検査を受ける前や結果が出てからの遺伝カウンセリングでは「当院にて、どの程度の頻度でどのような異常が見つかっているのか。異数性異常、構造異常、正常核型、各々の結果をどう考えればよいのか。今後の治療で何ができて何ができないのか」等の情報を提供している。ART施設での集積データを用いた遺伝カウンセリングは、カップルへのanticipatory guidanceにもなり得ると考える。