英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

研究開発・学会発表

診療・治療

第49回 日本哺乳動物卵子学会

  • 凍結時の平衡化時間と胞胚腔収縮法および補助孵化療法が融解胚盤胞移植へ及ぼす影響
  • 平成20年5月17日~18日 名古屋国際会議場
  • 第49回 日本哺乳動物卵子学会
  • 稲飯 健太郎、後藤 栄、小森 江利子、橋本 洋美、松永 雅美、苔口 昭次、塩谷 雅英
    英ウィメンズクリニック

【発表の概要】

【目的】胚盤胞の凍結保存方法について検討した 。胚凍結における平衡化液 ( Equilibration Solution:ES ) への浸漬時間の長短、胞胚腔収縮法
(Artificial Shrinkage:AS)1)ならびに補助孵化療法(Assisted Hatching:AHA)の有無による、融解後の胚の生存率、一部変性率、着床率、妊娠率を後方視的に比較検討した。

【方法】2005 年1月から2007年10月までにGardnerらの分類で Grade 3以上の胚盤胞を凍結し、融解後単一胚盤胞移植を施行した 345 周期を対象とした。胚凍結は vitrification kit vitrification media ( 北里バイオファルマ )を用い、胚を ES にて平衡化後、ガラス化液に投入しクライオトップにのせ液体窒素中で保存した。胚の融解はvitrification kit thawing media ( 北里バイオファルマ ) を用いて行った。融解胚は BlastAssist System Medium 2を用いて培養し移植に用いた。ASはレーザー( ZILOS-tkTM,Hamilton Thorn Bioscience Inc. )を用いて行った。AHAはレーザーを使用し透明帯を切開した。
<検討1> ES 浸漬時間の検討 : AS および AHA を施した胚盤胞を用いて、ES浸漬時間を5分にした群( 5分群 )と10~15分にした群(10分以上群 )で成績を比較した。
<検討2> ASおよび AHAの有用性の検討:ES浸漬時間を10分以上とした胚盤胞を用いて、ASとAHAを施行した胚( ASH有り群 )と施行しなかった胚(ASH無し群)での成績を比較した。
検討項目は融解後の胚の生存率、一部変性率( 融解胚の一部が変性している胚の割合)、融解胚あたりの着床率( 胎嚢が確認できた割合 )および妊娠率( 心拍確認できた割合 )とした。

【結果1】検討1において、5 分群と 10 分以上群でそれぞれ、胚生存率は 100.0 %( 47/47 )と 98.7 %( 157/159 )、一部変性率は4.3%(2/47)と13.2%(21/159)、着床率は44.7%(21/47)と 43.4%(69/159 )、妊娠率は34.0%(16/47)と40.3%(64/159)であった。各項目で両群間に統計学的有意差は認めなかったが、10分以上群で一部変性率は高い傾向にあった。しかし、妊娠率は10分以上群は5分群より高い傾向であった。

【結果2】検討2において、ASH有り群と ASH無し群でそれぞれ、胚生存率は 98.7%( 157/159 )と 95.0%( 132/139 )、一部変性率は13.2%( 21/159 )と9.4%( 13/139 )、着床率は43.4%( 69/159 )と47.5%(66/139)、妊娠率は 40.3%(64/159)と41.0%(57/139)であり各項目で両群間に有意差は認めなかった。

【結論】ES 浸漬時間5分と10分以上では胚の生存率、一部変性率、融解胚あたりの着床率および妊娠率に有意差は認めなかったが、10分以上で妊娠率が高い傾向があった。凍結前にASおよび AHAを施行することの有用性は認めなかった。今後さらに、検討を重ねより良い胚凍結条件を見つけていきたい。

【参考文献】1)Mukaida T, Oka C, Goto T and Takahashi K:Artificial shrinkage of blastocoeles using either a micro-needle or a laser pulse prior to the cooling steps of vitrification improves survival rate and pregnancy outcome of vitrified human blastocysts. Hum.Reprod. 2006 Dec;21(12):3246-52.

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