診療・治療
【発表の概要】
大豆由来イソフラボンの生体調節機能が注目されているが、生殖医学生物領域における機能については明確にされていない部分が存在する。本研究では、ゲニステイン、ダイゼイン、エコール、及びイソフラボンアグリコンAglyMax-70を用いて、in vitroにおけるヒトの子宮内膜上皮細胞における効果について検討した。
Ishikawa細胞において、ヒト血中濃度レベルのゲニステイン、エコールによりLeukemia inhibitory factor (LIF) とTGF-bの有意な分泌亢進が認められた。またAglyMax-70では濃度依存的なLIF,TGF-bの有意な分泌亢進が認められた。ウェスタンブロットにより、ゲニステイン及びAglyMax-70のERK1/2とp38 MAPキナーゼのリン酸化誘導が認められた。またゲニステインによるLIF とTGF-bの分泌を、エストロゲン受容体のアンタゴニストICI182780、ERK1/2上流シグナルのインヒビターPD98059、p38MAPキナーゼのインヒビターSB203580が阻止した。一方、ウェスタンブロットと免疫化学染色法を用いて、9~12日間培養Ishikawa細胞ではゲニステイン、AglyMax-70によるglycodelinたんぱく質の発現有意に増加を認められたが、ICI182780、PD98059、そしてPKA のインヒビターH89がこのglycodelin発現を抑制した。また、ゲニステイン、AglyMax-70によるcyclic AMPの産生促進も認められた。
更に、志願者から提供された初代の卵胞期または黄体期における内膜上皮細胞を用いて、AglyMax-70によるLIFとTGF-βの分泌有意に亢進が認められた。一方、初代の黄体期内膜上皮細胞ではglycodelin発現の誘導も認められた。
これらの結果により、内膜上皮細胞において、イソフラボンはエストロゲン反応遺伝子発現を介したLIF,TGF-β及びglycodelinの発現亢進作用をもつ可能性が示唆された。イソフラボンが受精卵の着床に役立つことが推測され、今後、不妊への応用可能性の視点から検討を加えたい。