診療・治療
【目的】
初期胚を凍結融解した際に、全ての割球が凍結前と同じ状態で回復してくる場合と、1個以上の割球に損傷を認める場合がある。今回我々は、採卵後2日目の初期胚において凍結融解後の割球損傷の割合が妊娠率ならびに生児獲得率に与える影響について検討をしたので報告する。
【方法】
2010年1月~2013年12月に急速ガラス化凍結法により初期胚を凍結後、単一融解胚移植を行った1549周期を対象とした。生児獲得率は出生児に関する予後調査の回答が得られた1491周期を対象とした。対象周期は、凍結融解後に損傷なし(A群:n=1309)、割球数の25%以下の損傷(B群:n=125)、25~50%の損傷(C群:n=61)、50%より高い損傷(D群:n=14)に分類し、臨床妊娠率、心拍陽性率および生児獲得率について検討を行った。
【結果】
A-D群で臨床妊娠率は21.1%(277/1309)、19.2%(24/125)、11.5%(7/61)、7.1%(1/14)であった。心拍陽性率は18.3%(239/1309)、19.2%(24/125)、9.8%(6/61)、7.1%(1/14)となり、生児獲得率は15.1%(196/1299)、13.4%(16/119)、8.5%(5/59)、7.1%(1/14)であった。A群とB群の間には全ての項目で有意な差は認めなかった。一方、割球損傷が25%以下の胚(A+B群)と25%より高い胚(C+D群)で比べた場合、臨床妊娠率は21.0%(301/1434)と10.7%(8/75)で、心拍陽性率18.3%(263/1434)と9.3%(7/75)となりそれぞれ有意な差を認めた。(p=0.030, p=0.047)
【結論】
採卵後2日目の初期胚において凍結融解後の割球損傷が25%以下の胚は、損傷がない胚と同等の生児獲得率であった。また、割球損傷が25%より高い胚においては、25%以下の胚と比較し妊娠率が低下することから、より割球損傷の少ない凍結融解方法を模索していくことが必要である。