診療・治療
【目的】第2子不妊夫婦の患者背景とそのARTの治療成績を検討した。
【方法】2011年1月1日から12月31日までに採卵を行った患者のうち、流産歴がない第2子不妊患者で、第1子をARTで妊娠出産した54組(A群)、ART以外で妊娠出産した14組(B群)、を検討対象とした。検討項目は年齢、ARTの適応、妊娠率、流産率、精液検査所見、帝王切開の既往とした。
【結果】患者年齢の平均は、A群36.6±3.4歳とB群35.3±2.5歳で有意差はみられなかった。A群の妊娠率、流産率はそれぞれ63.0%と32.4%、B群では57.1%と25.0%で有意差は見られなかった。A群では非妊娠症例の66.7%に帝王切開の既往を認め、妊娠に至った群の20.6%より有意に高かった。B群では帝王切開の既往症例はなかった。体外受精の適応はA群では原因不明29.6%、男性因子25.9%、卵管因子20.4%、B群では原因不明36%、男性因子14.3%、卵管因子35.7%であった。平均採卵数はA群6.3±4.5個、B群10.7±6.7個でありB群で有意に多かった。受精方法はB群では全てIVFで、A群ではIVF50.7%、ICSI39.4%、TESE ICSI9.9%であった。全体の受精率はA群 75.4%でB群58.7%より有意に高値であり、IVFの受精率はA群76.1%でB群の58.7%よりも有意に高かった。胚盤胞発生率はA群46.2%でB群63%より有意に低値であった。精液所見は運動率のみ有意差がみられA群52.1±15.5%、B群62.1±14.6%とB群で高値であった。
【結論】平均採卵個数はA群で有意に少なかった。これは第1子からARTを選択する症例に卵巣機能低下症例が多く含まれている可能性が示唆された。受精率はA群で高く、第1子の治療経過を参考にして受精方法を選択し、受精障害を回避し得た可能性があること、B群の精液検査で運動率が有意に高かった事が関与していると考えられた。胚盤胞発生率がB群で高かったことより、第1子をART以外で妊娠出産している群の胚発生が良好であることが示唆された。