診療・治療
【目的】
血中AMH値は卵巣の胞状卵胞数を反映するため卵巣予備能の指標として利用されている。AMH低値例では排卵誘発に対する卵巣の反応性が低下し、その結果ARTの治療成績が低下する傾向にある。特に、測定感度以下の症例では、その治療成績は不良と考えられる。そこでAMH低値例の治療法を検討する目的で、AMH0.1ng/ml未満で妊娠に至った30例と妊娠に至らなかった65例を比較検討した。
【方法】
2011年および2012年に、当院でARTを実施したAMH0.1ng/ml未満の30才から45才の95名を対象とし、そのうち妊娠に至った30例をA群、妊娠に至らなかった65例をB群として、平均穿刺卵胞数、平均回収卵子数、胚移殖実施率を両群間で比較した。また妊娠例の流産率を年齢別に検討した。さらに、排卵誘発方法、胚移植時期、胚凍結実施の有無等についても検討した。
【結果】
妊娠に至ったA群30例の流産率は53.3%と高かった。流産率を年齢別に検討すると34才以下50%( 1/2 )、35才〜39才 37.5%(6/16)、40才以上75%(9/12) で、43才以上では妊娠を継続できた症例はなかった。A群およびB群の採卵時の平均卵胞数はそれぞれ2.8個、1.6個、平均回収卵子数はそれぞれ2.0個、1.1個とA群で有意に多かった。胚移植実施率は54.4%、31.6%とA群で有意に高かった。誘発方法では、両群ともにクロミフェン、レトロゾールなどの内服薬を用いた低刺激法を実施している割合が高かった。
【結論】
AMHが測定感度以下でも、ARTで妊娠が可能な症例は決して稀ではない。AMHが測定感度以下で妊娠に至る症例は、妊娠に至らなかった症例よりも発育卵胞数および採卵個数が比較的多かったことから、AMHが測定感度以下の症例でも発育卵胞数および採卵個数を増加させる工夫が重要と考えられた。またAMHが測定感度以下の症例では妊娠にいたっても流産率が高く、この点は今後の課題である。