診療・治療
Empty follicle syndrome(EFS)はCoulam et al(1989)が最初に報告し、採卵の1%程度に遭遇する。EFSは、卵巣機能の低下に基づく状態といわれ、高年齢に多く遭遇し、卵の発育あるいは成熟不全と考えられている。また、卵の回収率の低い例はBorderline form of EFSとの提唱もある(Isik et al. 2000)。しかしそれらを比較検討した文献はない。
【目的】EFSの症例を提示し、卵の回収率の低い症例との比較検討をおこなった。また、次周期のART成績についても検討した。
【対象と方法】2005年から3年6カ月期間でアンタゴニス法をもちいた卵巣刺激を行った1793例のうち、採卵時卵胞穿刺15回以上でも卵回収率が0例(EFS例)をA群9例、卵回収数が1から3個であったB群15例、卵回収数が4または5個であった例C群18例とした。背景因子およびART成績について後方視的に検討した。【結果】各群とも、背景因子(年齢、基礎FSH値、不妊期間)には差は認められなかった。EFS例に卵回収の低い症例と比較してPCOS合併率が多く認められたが有意差はなかった。A群は、他の群に比較して、hMG/FSH投与量と投与日数も多い傾向があり、採卵2日前のE2値はやや低い傾向が認められた。穿刺卵胞数15回以上で回収卵2個以下の初回治療症例には、妊娠例は存在しなかった。卵回収率の低い症例の採卵周期胚移植の妊娠率は、B群20%、A群33%であった。次回の治療を含めた症例別妊娠率は、A群66.7%(6/9)B群66.7%(10/15)C群66.7%(12/18)であった。EFS再発例は認めていない。
【結論】EFSと卵の回収率が低い症例は、次周期ART成績に差はなく近似した病態と推測された。