診療・治療
【目的】
凍結胚の融解においては、段階的希釈法による耐凍剤の除去が一般的に行われているが、近年では、Thawing solution(TS)のみを用いたワンステップ融解法に関する報告が増加している。ワンステップ法は操作の簡略化や作業時間の短縮が期待される一方で、単一操作による耐凍剤の完全除去の困難さや、それに伴う胚への影響が懸念されている。本研究では、ワンステップ融解法の有用性を評価するため、従来法との比較検討を行った。
【対象と方法】
患者から研究および廃棄に関する同意を得た症例を対象とし、Gardner分類においてGrade 3BB以上の凍結胚盤胞を用いた。従来群(n=25)では、TSに1分、DSに3分、WSに5分間浸漬する3段階希釈法により融解を行った。ワンステップ群(n=25)では、TSに1分間浸漬するのみで融解を実施した。融解後はタイムラプス培養器を用いて胚の経過を観察し、48時間後にHatching率およびBlebbing出現率を評価した。
【結果】
融解後の胚の生存率は、従来群およびワンステップ群ともに100.0%(25/25)で、有意差は認められなかった。Hatching率は、従来群で80.0%(20/25)、ワンステップ群で28.0%(7/25)と、従来群が有意に高かった(P<0.05)。一方、Blebbing出現率は従来群で44.0%(11/25)、ワンステップ群で88.0%(22/25)となり、ワンステップ群において有意に高値を示した(P<0.01)。
【考察】
ワンステップ融解法は、作業は簡便であり、胚の生存率においては従来法と同等の成績を示した。しかしながら、Hatching率の有意な低下およびBlebbing出現率の増加が認められたことから、急激な浸透圧変化による細胞膜への負担が、Blebbing増加の主要因である可能性が示唆された。ワンステップ融解法の導入に際しては、融解後の胚の状態を適切に評価しつつ、その実施を慎重に検討する必要があると考えられる。