診療・治療
【目的】
当施設では、microPNの直径が14μm未満の場合を移植適応とし、患者との十分な相談の上で胚移植を実施している。先行研究において、40歳以下の患者における正常2PN接合子では、妊娠に至る胚において前核膜崩壊直前に雌雄前核の面積差が小さくとなることを報告している(Otsuki et al., Fertil Steril, 2019)。この知見から、雄性前核(mPN)に対する雌性前核(fPNs)の体積和の比(fPNs/mPN)が1に近いことが、染色体正常性の指標となる可能性が示唆される。そこで本研究では、妊娠・出産に至ったdiploid 3PN由来胚におけるfPNs/mPN比の分布を検討し、移植適応判断に資する閾値の探索を目的とした。
【方法】
前編の研究でdiploid 3PNと判定された111胚を対象に、EmbryoScopeを用いて取得したタイムラプス画像よりfPNs/mPN比を算出した。妊娠・出産例については各症例のfPNs/mPN比を抽出し、妊娠群の分布範囲を解析した。加えて、英ウィメンズクリニックにおけるiBISを用いたタイムラプス画像データ(妊娠例)も含め、diploid 3PN由来胚における至適fPNs/mPN比を検討した。さらに、microPN直径14μm未満群および14μm以上群における胚盤胞到達率および良好胚盤胞形成率を比較検討した。
【成績】
解析対象胚のfPNs/mPN比は0.40〜3.09と広範に分布し、移植を実施するも妊娠・出産に至らなかった胚では0.69〜1.24の範囲であったのに対し、妊娠・出産に至った胚では0.71〜0.87に集中していた。diploid 3PN群全体(111胚)のうち、胚盤胞まで培養した102胚における胚盤胞到達率は48.0%(49/102)、良好胚盤胞形成率は28.4%(29/102)であった。microPN直径14μm未満群および14μm以上群における胚盤胞到達率はそれぞれ60.4%(32/53)、34.7%(17/49)(P=0.011)、良好胚盤胞形成率は43.4%(23/53)、14.3%(7/49)(P=0.002)であり、いずれも14μm未満群で有意に高かった。
【結論】
妊娠出産例におけるfPNs/mPN比は0.71〜0.87の範囲に分布し、本体積比はdiploid 3PN胚のうち移植適応となり得る胚の選別指標として有用である可能性が示唆された。しかしながら、妊娠・出産例におけるfPNs/mPN比は40歳以下の2PN胚における理論値より低値を示していることから、第2のfPNの形成遅延や患者年齢の影響が関与する可能性があり、今後の検討が必要と考えられる。また、microPN直径が14 μm未満の群では胚盤胞到達率および良好胚盤胞形成率が有意に高く、現行の基準は暫定的な評価として妥当性が示唆された。