英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

理事長コラム

はなぶさコラムス

当院理事長 塩谷雅英が毎日の診療の中、見えてきたこと、皆様に是非お伝えしたいことなどをつづったコラムです。

第9回 卵子の殻が硬く厚いために妊娠が起こらない場合について (2005年6月)

今回は卵子の殻が硬く厚いために妊娠が起こらない場合についてお話します。私達ヒトの卵子は透明帯と呼ばれる、タンパク質でできた透明な殻で覆われていま す。この透明帯は柔らかい卵子を保護し、また卵子に多くの精子が入って受精してしまう多精子受精を防ぐ働きをしています。この多精子受精を防ぐ働きは透明 帯反応とよばれ、1個の精子が透明帯を貫通して卵子の中に侵入すると透明帯は瞬時にその性質を変化させて、他の精子が貫通できなくなる仕組みです。
さて、受精した卵は分裂・増殖を繰り返しながら成長して大きくなります。そして、受精後5日目には水分を蓄えた風船の様な形となり、ふくらみます。これ を胚盤胞と呼びます。こうなると透明帯は薄く引き延ばされた皮の様になります。さらに受精卵の酵素によって内側から溶かされ、やがてこの透明帯は破れ、中 から受精卵が脱出し(孵化と呼ばれます)子宮の中に着床します。ところが、この透明帯が硬く厚いために精子が卵子の中に入れず受精出来ないご夫婦がありま す。また、受精はできるものの、この透明帯から受精卵が孵化できず子宮に着床出来ない方もあります。体外受精を行ってみて初めて分かることですがご心配は ありません。ちゃんと対策はあります。まず、受精が起こらない場合には、顕微授精法で1個の精子を卵子に直接注入してあげれば良いでしょう。孵化できない 場合には、移植前にレーザー光線にてこの透明帯を薄くすることができます。また、酸性タイロード液や蛋白分解酵素の力で透明帯を溶かす方法もあります。これらを補助孵化療法と呼んでいます。

執筆:院長 塩谷 雅英

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