英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

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胚培養スタッフより

はなぶさコラムス

当院胚培養スタッフからお届けするコラムです。一般の治療ではなかなか見えにくい部分をお届けしています。

低乳酸培養液について(2026年9月)

前回の培養液のコラム「受精卵を育てる培養液とはどんなもの?(2018年4月)」では同じシングルメディウムの中でも様々な種類が開発されていることをお伝えしました。また、当院では新しい培養液に変更する場合は実際に使用し、従来の培養成績と比較検討して従来以上の成績を得られた場合に安定性や使いやすさなどを考慮して新しい培養液へ変更するという方針を取っています。

今回は現在使用しているシングルメディウムの低乳酸培養液についてお話したいと思います。

まず前回のおさらいです。胚は細胞ステージごとに必要とするエネルギー源が変化していきます。卵子が受精してから初期胚までのエネルギー源は主にピルビン酸でそれ以降はグルコースに変化していくのですが、シングルメディウムは胚が自ら必要な栄養素を取り込むという考えから、受精後同じ組成の培養液で培養することができます。

 

 

この胚の発生における代謝産物として細胞内外に乳酸も蓄積していくのですが、マウス胚における報告にて、培養液中の乳酸濃度が高くなるにつれて胚のエネルギー源であるピルビン酸の取り込みが低下していくことが報告されました。

そこで開発されたのが低乳酸培養液です。

低乳酸という名前の通り、その乳酸濃度は他社製品が4~10mMであるのに対して、1mMと1/4以下の濃度となっています。

以下のグラフは当院で約半年ほど行った培養液の検討です。どちらもシングルメディウムでオレンジ色が低乳酸培養液、青色が従来使用していた培養液です。

従来の培養液に比べて低乳酸培養液は良好な胚盤胞の発生率が高いという結果になりました。

 

 

培養液中の乳酸濃度が低い環境では乳酸によるストレスが軽減され、質の高い胚盤胞が増えたのではないかと考えられます。

このように、不妊治療の分野ではより良い胚発生を目指して次々と新しい培養液が開発されています。しかし、新しい培養液であれば必ず良いというわけではなく実際の培養環境において、その有用性を確認することが大切です。

初めにもお伝えしたように当院では新しい培養液を導入する際には実際の培養成績を従来の培養液と比較し、その効果を慎重に検討しています。

これからも一つひとつのデータを大切にしながら、患者様の大切な胚をより良い環境でお預かりできるよう、培養環境のさらなる向上に努めてまいります。

 

培養部門 籠橋茜

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