英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

研究開発・学会発表

診療・治療

第27回 日本受精着床学会総会・学術講演会

  • 胚盤胞培養の現状と問題点 妊娠率向上のための胚盤胞培養技術の応用~SEET法~
  • 平成21年8月6日~7日 国立京都国際会館
  • 第27回 日本受精着床学会総会・学術講演会
  • 後藤 栄


    英ウィメンズクリニック

 着床周辺期の胚と子宮内膜はクロストークをしており胚は着床に向けて子宮内膜の局所環境を修飾しているという基礎研究の概念に基づき、演者が考案した方法が二段階胚移植である。その後、特に反復ART不成功例に対する移植法として他施設からも良好な成績が報告されている。しかし、二段階胚移植は少なくとも胚を2個移植するため多胎を回避できなかった。近年、多胎予防のため単一胚移植が行われている。この場合、初期胚移植か胚盤胞移植(BT)のいずれかを行うことになるが、これらの移植では二段階胚移植のような胚と子宮内膜の相互作用を期待できない。そこで、新たに考案した方法が子宮内膜刺激胚移植法:Stimulation of Endometrium –Embryo Transfer; SEETである。近年、胚培養液上清(ECS)に子宮内膜胚受容能促進に関与する胚由来因子が存在することが報告されており、SEETはBTに先立ちECSを子宮腔内に注入することにより子宮内膜が刺激を受け、胚受容に適した環境に修飾することを期待する方法である。

 英ウィメンズクリニックにおいて、反復ART不成功例で、ホルモン補充移植周期に凍結融解胚盤胞を移植した48症例を対象として、SEET群とBT群に分けて妊娠成績を検討したところ、臨床妊娠率および着床率はそれぞれ、SEET群が87.0%、71.9%であり、BT群の48.0%、37.8%と比較し有意に高率であった。また、胎児心拍が確認できた周期の妊娠判定日の血中hCG値はSEET群がBT群より有意に高かった(Goto et al., Fertil.Steril 2007)。
 さらに、初回採卵周期に全胚凍結を行い凍結胚盤胞が得られ、研究に同意した144例を対象とし、BT群48例、市販培養液を子宮注入後に胚盤胞を移植したST群48例、SEET群48例の3群に無作為に分け前方視的に検討を行ったところ、high gradeな胚盤胞を移植した症例での臨床妊娠率は、BT群56.0%、ST群69.0%、SEET群80.0%となり、SEET群はBT群より有意に高率だった( Goto et al., Fertil.Steril 2008)。

 implantation windowは性ステロイドの制御のみならず、胚と子宮内膜のクロストークによって導き出される。クロストークは初期胚の段階からなされていると考えられているが、ホルモン調節周期におけるBTでは性ステロイドによる子宮内膜の分化は行われているが、胚盤胞が移植されて初めてクロストークが開始するため、子宮内膜の着床準備が遅れ、着床不全が起き妊娠不成立となるか着床遅延が生じている可能性がある。私どもの研究で、妊娠判定日のhCG値がSEET群ではBT群と比べ高値となったが、SEETでは培養液注入時よりクロストークが開始するため、implantation windowが適時に開き、BTと比較して着床時期が早くなったことを示唆するものではないかと推察している。SEETは臨床的に有用な移植方法となりうると考えている。

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