英ウィメンズクリニック

HANABUSA WOMEN'S CLINIC

研究開発・学会発表

診療・治療

第54回 日本卵子学会

  • 新規凍結保護物質カルボキシル化ポリリジンを用いたガラス化凍結法の検討
  • 2013年5月25日~2013年5月26日 学術総合センター
  • 第54回 日本卵子学会
  • 辻優大1・緒方洋美1・古橋孝祐1・梶原綾乃1・十倉陽子1・山田聡1・緒方誠司1・
    水澤友利1・松本由紀子1・岡本恵理1・苔口昭次1・塩谷雅英1・松村和明2・玄丞烋3





    1英ウィメンズクリニック


    2北陸先端科学技術大学院大学


    3京都工芸繊維大学 繊維科学センター

【発表の概要】

 

【目的】


胚や卵子のガラス化凍結保存においてはEthylene Glycol(EG)やDimethyl Sulfoxide(DMSO)が凍結保護物質(CPA)として広く用いられている。しかしDMSOは凍結液における浸透圧の上昇など、細胞毒性が懸念されてきた。近年、DMSOに代わるCPAとして、カルボキシル化ポリリジン(COOH-PLL)がマウス繊維芽細胞やiPS細胞の凍結融解後の生存性において大幅に改善することが報告されている1,2)。
そこで本研究では、ヒト胚への応用を最終目標に、COOH-PLLを用いた凍結・融解
における体外発生能について、マウス初期胚を用いた検討を行った。

【方法】


簡易ガラス化凍結されたICR系マウスの8細胞期胚を融解後、167個の胚を以下の検討に供した。

<検討1>

COOH-PLLの濃度検討:
7.5%EGと7.5%DMSOを含んだ平衡化液(ES)にて6分間平衡化処理を施した後、0.5M Sucroseと15% EG を含んだガラス化液(VS)に、15% DMSOを添加した群(DMSO区)と、DMSOを添加せずCOOH- PLLを添加した群(PLL区;表参照)にわけ、それぞれ60秒浸漬し凍結した。加温は、6段階に濃度を分けたsucrose(1M→0.75M →0.5M→0.25M→0.125M→0M)添加融解液を用い、凍結・融解後における胚の生存率ならびに胚盤胞発生率について検討した。

<検討2>

COOH-PLLの毒性検定:
DMSO区及び各濃度のPLL区から得られた胚盤胞は、DNA核についてはDAPI染色を行い、更にCaspase3/7に対する蛍光プローブを用いた染色を行い、アポトーシス細胞数の検出を行った。

【結果】


<検討1>

DMSO区と各濃度のPLL区の生存率はそれぞれ90%以上で、胚盤胞発生率は75%以上となった。DMSO区とPLL区に差はなく、また、PLL区の各濃度間における差も認めなかった。
 

<検討2>

DMSO区と各濃度のPLL区における平均アポトーシス細胞数は約7%であり、DMSO区とPLL区に差は認められなかった。また、PLL区の各濃度間における差も認めなかった。

【考察】


マウス胚を用いた各濃度におけるCOOH-PLLは、DMSOと同等の体外発生成績を示したことから、DMSOに代わるCPAになる可能性が示唆された。今後は、ヒト胚に対するCOOH-PLLの影響及びCOOH-PLLの最適濃度の検討を重ねていきたい。

【参考文献】


1). Matsumura K, et al. Biomaterials. 2009: 30; 4842-4849.
2). Matsumura K, et al. Cell Transplant. 2010: 19; 691-699.

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