診療・治療
【目的】
悪性疾患に罹患した患者の妊孕能温存を目的とした卵子凍結保存(医学的適応)のみならず、将来の挙児を見すえた卵子凍結保存(社会的適応)のニーズが高まっている。しかしながら、その後これらの卵子を利用して実施した治療の成績についての報告は多くない。そこで、当院における卵子凍結・融解・移植の成績について解析を行ったので報告する。
【対象と方法】
2011年1月から2022年12月までに当院で卵子を凍結保存した492例(871周期)、卵子を融解して治療した115例(136周期)の治療成績について後方視的に検討した。
【結果】
社会的適応(以下S群)が78.3%(385症例)と、医学的適応(以下M群)の 21.7%(107症例)よりも多かった。2群の凍結時の平均年齢はS群38.8±4.7歳、M群31.2±6.3歳、採卵あたりの平均凍結個数はS群4.7±5.2個、M群5.9±6.0個であった。卵子融解後の生存率、受精率、胚盤胞発生率、移植症例あたりの臨床妊娠率、移植症例あたりの生産率は、それぞれ、S群:75.8%(471/621)、71.3%(336/471)、36.5%(76/208)、23.7%(9/38)、15.8%(6/38)、M群:75.9%(44/58)、72.7%(32/44)、31.6%(6/19)、40.0%(2/5)、 40.0%(2/5)であった。
【考察】
社会的適応による卵子凍結はできるだけ若年で実施されることが望ましいが、当院の平均年齢は38歳以上と比較的高齢である実態が浮かび上がった。それでも、移植症例あたり15.8%の生産を得ていることからその有用性はあると考えられた。一方医学的適応の場合には平均年齢31.2歳と比較的若年で実施されており、移植症例あたりの生産率は40%と高く、やはりその有用性が認められた。しかしながら、治療成績は満足のいくものでは無く、今後も卵子凍結・融解・移植の治療成績を向上させる努力が必要と考えられた。