診療・治療
【目的】
悪性疾患に罹患した患者の妊孕能温存を目的とした卵子凍結保存(医学的適応)のみならず、将来の挙児を見すえた卵子凍結保存(社会的適応)のニーズが高まっている。しかしながら、その後これらの卵子を利用して実施した治療の成績についての報告は多くない。そこで、当院における凍結卵子融解後の生存率・ICSIによる受精率・BL発生率・胚移植の成績を解析した。
【対象と方法】
2011年1月から2022年12月までに当院で卵子を凍結保存した492例(871周期)(社会的適応(以下S群):384例、医学的適応(以下M群):108例)、卵子を融解して治療した129例(154周期)の治療成績について後方視的に検討した。
【結果】
凍結時の平均年齢はS群38.8±4.6歳、M群31.1±6.4歳、採卵あたりの平均凍結個数はS群4.7±5.2個、M群5.9±6.0個であった。卵子融解後の生存率、受精率、胚盤胞発生率、移植症例あたりの臨床妊娠率、移植症例あたりの生産率は、それぞれ、S群:76.3%(508/666)、71.3%(362/508)、35.6%(78/219)、25.4%(16/63)、14.3%(9/63)、M群:76.7%(46/60)、69.6%(32/46)、31.6%(6/19)、60.0%(3/5)、40.0%(2/5)であった。
【考察】
当院のS群による卵子凍結の平均年齢は38歳以上と比較的高齢である実態が浮かび上がった。一方M群の場合には平均年齢31.1歳と比較的若年で実施されており、移植症例あたりの生産率は40%であったが、妊孕性温存のための治療として満足のいく成績ではなかった。これからも治療成績向上の努力と、S群ではより若年での卵子凍結の啓蒙や、M群ではより多くの卵子を確保できる可能性がある卵巣組織凍結も1つの選択肢として提案が必要であると考えられた。