診療・治療
【目的】
悪性疾患に罹患した患者の妊孕能温存を目的とした卵子凍結保存(医学的適応)のみならず、将来の挙児を見すえた卵子凍結保存(社会的適応)のニーズが高まっているが、予後報告は多くない。当院における卵子凍結を行った症例の治療内容を調べた。
【対象と方法】
2011年1月から2023年12月までに当院で卵子を凍結保存したのは599例(1058周期)であった。このうち社会的適応(以下S群):471例(862周期)、医学的適応(以下M群):128例(196周期)であった。このうち卵子を融解して治療した129例(154周期)の生存率・ICSIによる受精率・BL発生率・胚移植の成績を後方視的に解析した。
【結果】
凍結時年齢はS群38.4±4.6歳、M群31.4±6.4歳、凍結個数はS群5.1±5.5個、M群6.0±5.9個であった。融解時年齢はS群41.2±4.4歳、M群34.7±4.3歳、融解後の生存率、受精率、胚盤胞発生率、症例あたりの臨床妊娠率、症例あたりの生産率はS群:76.3%(508/666)、71.3%(362/508)、35.6%(78/219)、25.4%(16/63)、14.3%(9/63)、M群:76.7%(46/60)、69.6%(32/46)、31.6%(6/19)、60.0%(3/5)、40.0%(2/5)であった。また卵子凍結後に自然妊娠で出産したのは1例、凍結卵子で妊娠せず新鮮卵子で出産したのは129例中27例であった。
【考察】
S群の凍結時年齢は38.4歳と比較的高齢である実態が浮かび上がった。一方M群の場合には31.4歳と比較的若年であるが、妊孕性温存のための治療として満足のいく成績ではなかった。また融解した5人に1人は凍結卵子でなく新鮮卵子で出産していた。これからも治療成績向上の努力と、S群ではより若年での卵子凍結の啓発が必要であると考えられた。