診療・治療
【背景・方法】卵胞は独自の環境を構築しており、その性状は顆粒層細胞(GCs)と卵胞液(FF)に支持される。これらの内在因子であるmicroRNA(miRNA)もまた卵子や初期胚の発育に重要な機能を有しているが、その量や構成は疾患や加齢・肥満のような体環境によって大きく変動する。本研究では、次世代シークエンスを用いて10頭の牛の“個体ごと”のmiRNA発現(GCsおよびFF)とmRNA発現(GCsのみ)を同定・比較することで卵胞中miRNAの発現・機能・分泌の背景を検証した。
【結果】❶miRNA発現全体では、FFとGCsは正の相関を示すが、個々のmiRNA発現では区々な相関関係を示した。ネットワーク解析を行うと、miRNAは類似した発現パターンを有する複数のクラスターに分けられるが、GCsとFFでは異なるクラスター構造を示した。加えて、FFでは、各クラスターのmiRNAに共通した配列モチーフが認められた。❷miRNA標的遺伝子データにGCsのmiRNA発現を加味した新規miRNA遺伝子抑制効果の指標(PTE)を開発した。PTEはゲノム全体のmRNA発現と負の相関を示すことから、miRNA機能の指標として有効であった。また、PTEを用いると、GCs中のmiRNAが特定の細胞機能を標的としている可能性が予測された。❸各miRNA発現に基づいてサンプルをRich群とPoor群に分類し、両群のmRNA発現から発現変動遺伝子を取得した。これを元に上流因子解析を行ったところ、各miRNA発現に関連する複数の分子が同定された。
【考察】GCsにおけるmiRNA発現には特定の分子が寄与している可能性が示唆された。GCsはFF中miRNAの主な産生源である一方で、FFへの分泌に際しては選択性が働くことが明らかとなった。この背景にはクラスター内のmiRNA配列モチーフが寄与している可能性が考えられた。PTEは卵胞中のmiRNA機能を測る上で有効な新規指標であることが示唆された。