診療・治療
【背景・目的】
非閉塞性無精子症(non-obstructive azoospermia:NOA)は男性不妊の中で最も重症な病態であるが、その遺伝学的背景は未解明な症例が多い。TRAF6はインターロイキン1受容体およびToll様受容体シグナル伝達を介してNF-κB活性化や細胞生存に関与し、近年では精巣における自然免疫シグナルがセルトリ細胞機能や生殖細胞の維持に関与することも示唆されている。しかし、TRAF6とヒト精子形成障害との関連はこれまで報告されていない。本研究では、重度精子形成障害患者に認められたTRAF6変異の臨床的意義を検討した。
【方法・結果】
重度男性不妊患者23例に対してWhole-exome sequencing(WES)を施行した結果、1例のNOA・Sertoli cell-only syndrome(SCO)患者にTRAF6 NM_004620.3.1519A>T(p.Ser507Cys)ヘテロ接合性変異を同定した。さらに男性117例を対象にSangerシーケンスによる解析を行ったところ、別のSCO患者1例にも同一変異を認めた。両症例とも無精子症、SCO組織像、高ゴナドトロピン血症を示し、核型は46,XYであった。本変異は非無精子症男性54例では認められず、38KJPNデータベースと比較して有意な集積を認めた(2/126対88/77,444アレル、Fisher正確確率検定、p=0.00955)。本変異は保存性の高いTRAF-Cドメインに位置し、複数のin silico解析で有害と予測された。一方、ACMG/AMP基準では現時点でVariant of Uncertain Significance(VUS)に分類された。
【結論】
TRAF6 p.Ser507Cys変異は、2例の独立したSCO患者に共通して認められたことから、重度精子形成障害に関連する候補感受性変異である可能性が示唆された。本変異の病的意義を明らかにするためには、さらなる症例の蓄積および機能解析が必要である。